自動車業界としての新型コロナウイルス対策支援について

一般社団法人日本自動車工業会(以下自工会)、一般社団法人日本自動車部品工業会(以下部工会)、一般社団法人日本自動車車体工業会(以下車工会)、一般社団法人日本自動車機械器具工業会(以下自機工)の自動車工業4団体では、「医療現場を始め、新型コロナウイルスの脅威と闘っている方々のお役に少しでも立っていきたい」との想いから、業界一丸となった取組みを進めております。
会員各社における医療現場等への支援内容の具体例につきましては、本ページにて順次ご紹介して参ります。

医療支援の事例紹介

人工呼吸器の生産支援【マレリ株式会社】

自動車業界は、業種の枠を越えた“ワンチーム”で新型コロナウイルスの感染防止対策や企業支援などに取り組んでおり、その支援活動の一環である、マレリ株式会社(埼玉県さいたま市、ベダ・ボルゼニウスCEO)の取り組みについてご紹介します。同社は、今後、自動車産業のモノづくり力を活かして開発した人工呼吸器を世界へ届ける予定です。

人工呼吸器生産することになった経緯

大手サプライヤーのマレリは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経済産業省(経産省)からの依頼を受ける形で人工呼吸器の生産を決断。メトランと連携して新型コロナウイルス専用人工呼吸器を生産することになりました。

同社が経産省から人工呼吸器の増産支援依頼を受けたのは4月20日のこと。翌21日には経産省、マレリ、メトランの3者で打ち合わせを実施し、その場で支援を即断しました。22日には部品調達や代替部品の検討と試作、信頼性評価実験など量産に向けた具体的な活動を開始。わずか3日という短期間で自動車サプライヤーによる医療機器生産が固まったのです。その後、5月14日には第2回目の3者会議を実施。当初予定していた国による人工呼吸器の備蓄計画が変更になったことに合わせ、「マレリというモノを大量に品質よく作る技術を持つ会社と、メトランという人工呼吸器専門メーカーのオープンイノベーションとして、人工呼吸器を必要としている国に届ける」(石橋常務執行役員)という新たなスキームとして推進することになりました。

自動車部品の量産ノウハウを人工呼吸器生産に反映

通常、自動車部品の設計開発、生産には複数年を要します。マレリが人工呼吸器を生産するに当たり、「これほど短期間でやれたのは、購買や生産、生産技術など全員が1人の命を救えるという思いを共有できたことが大きい。こうした1つの思いが、会社の事業の壁、組織の壁を取っ払って、我々が経験したことのないスピードで準備ができた」と、石橋常務執行役員は振り返ります。
自動車部品と人工呼吸器の生産を結んだ技術。これこそが量産というノウハウです。石橋常務は「完璧なものを1個作れと言われれば作れる。それが1万個をミスしないで作れるかというと難しくなる。1つ1つの作業を確実に同じことが繰り返せるというのが量産のノウハウ」と強調します。

これまでメトランでは年間極少量の人工呼吸器を生産していました。ところがコロナ禍の影響で需要が急増。現在は1、2万台レベルの引き合いが来ている状況です。ただ、メトランは医療機器特有の確定受注生産方式のための極少量生産です。しかも数日をかけて1人の従業員が組み立てている状況でした。大手サプライヤーならではの量産の強みがコラボレーションすることにより、人工呼吸器生産に活かされることになりました。

マレリでは数日をかけて組み立てていた生産を15分(最短5分)というタクトタイムで行います。この生産工程を実現するため、「すべての作業工程をバラバラに分割、どのようにばらして、どの工程までをワンブロックにすると全体のタクトが合うのか、またどの作業があわないのかなど、分割した作業工程の1つ1つの中身まで気を付けながらライン設計」(同)を構築しました。

人工呼吸器の生産ラインは児玉工場でモノづくりに関する研修を行う「モノづくり道場」内に設置しました。①サブ(構成部品の組立)②組立③調整④エージング(負荷テスト)⑤検査⑥品質保証検査⑦梱包という7工程で構成されており、スキルの高い従業員が選ばれ作業に当たっています。現在は7人が担当していますが、生産量に応じて人員体制をフレキシブルに動かせるように対応しています。1人の従業員が少なくとも2つ以上の工程が担当できるようにし1人が休んでもフォローできる体制を整えています。自動車部品生産の中で培った量産のノウハウです。

人工呼吸器は命に直結する医療機器、それだけに決して生産でのミスは許されません。それは自動車部品もまた同じです。だからこそ、「今までのモノづくりの経験値が活きている。日本の自動車産業が積み上げてきた価値だ」(同)と強調します。
自動車サプライヤーであるマレリの人工呼吸器生産は、自動車産業のサプライチェーンを支える部品業界が持つモノづくり力を活かした取り組みと言えます。それでも石橋常務は「今の自動車産業の現実では、我々がメトランから支援されているという見方もできる。人工呼吸器の生産を支援しているが、実際のビジネスという意味では、我々の従業員の仕事をメトランからいただくことで、社会貢献もできて当社の雇用維持にもつながっている」と感じています。

マレリとメトランによるオープンイノベーションによる取り組みは、コロナ禍で人工呼吸器を必要とする人々に届ける社会貢献活動を互いに支え合っているのです。

石橋誠常務執行役員のコメント

当社は国から人工呼吸器の増産支援依頼が来る前からコロナ禍に対応する社会貢献活動をやっていかなければならないと話し合ってきました。人工呼吸器の生産に当たっては当初のスキームから一部変更にはなったものの、マレリというモノを大量に品質よく作る技術をもっている会社と、メトランという 専門メーカーのオープンイノベーションとして、人工呼吸器を必要としている国に届けていく予定です。

当社がこの仕事をするにあたって、この短期間でやれたのは、購買や生産、生産技術など全員が1つのビジョンを共有できたことです。1台の人工呼吸器を市場に出すことで最低でも1人の命が救える。1000台作るということは1000人の命を助けることになる。こうした思いが、会社の事業の壁、組織の壁を取っ払って、我々が経験したことのないスピードで準備ができたと感じています。

今回開発した人工呼吸器は新型コロナウイルス専用です。ICUなどで使う高級機ではありません。一般的な人工呼吸器の価格は1200~1500万円と高額です。それは様々な病気の患者に専門医が対応できるようありとあらゆる設定ができるようになっているためです。一方、コロナ禍で必要な人工呼吸器は必要最低限の機能があればいい。今回の人工呼吸器は機能を絞り、価格は10分の1に抑えています。1200~1500万円の機械は開発途上国などでは買えません。できるだけリーズナブルな価格にして広く多くの人に届ける人工呼吸器にしたいとの思いで開発しました。

自動車には高級車も軽自動車もあります。自動車産業は誰もが高級車から品質のいい安いクルマも買えるようにしてきました。これこそが自動車産業の誇りです。今回、医療業界で高級機器しか存在しないという中で、いかに普及帯の機器を作るかにチャンレジしてきました。この取り組みがマレリとメトランとのオープンイノベーションなのです。

当社が生産した人工呼吸器は7月1日に初めての出荷を迎えました。まずは南米ボリビアに人道支援として送りました。今後はメキシコなどにも送る予定にしています。

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