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駐在員・見てある記(2)
Philippines・Now
フィリピンの輸送事情・今
熊谷 重雄
〔日産ディーゼルフィリピン会社 副社長〕
フィリピンは、今は雨季の真っただ中。毎日の日本の天気予報を見るにつけ、日本のほうが暑いじゃないか、フィリピンのほうがこの時期は過ごしやすいぞと、ひとり自分に言い聞かせている今日このごろです。
1997年のアジア通貨危機に直面し、昨年の大統領選挙を経て現在に至る当地としては、緩やかにではありますが、経済回復の兆しありと肌で感じられるようになりました。
さて、フィリピンの輸送事情ですが、ここでは鉄道がほとんど発達しておらず、また島が多いため、輸送手段としては自動車と海運が主体となり、フィリピン経済の物流を担っています。
陸上の物の輸送手段はトラックが主体。人の移動手段は乗用車はもちろんとして、中・長距離はバス、近距離はジプニー、短距離はトライスクル等です。
以下、それぞれの状況について少々詳しく説明いたします。
《トラックについて》
トラックは輸入中古車がほとんどで、主として日本製、種類としては平ボディの長尺車が主流です。アルミバンは耐用が長く再架装されるため、日本からは供給されにくいのでしょう。また、トラクターヘッドも多く見かけ、なぜか後輪1軸は日本製、後輪2軸はアメリカ製と区分され、主にコンテナ輸送で島国フィリピンの輸送を担っています。
トラックは中古車というだけで、使い方はごく一般的です。しかし、「こんなになってまで使うの?」「まだ使えるの?」という状態で走っているトラックをときどき見かけます。修理が可能なかぎり直して使うという、大量消費国日本ではもう忘れ去られた状況をよく見かけます。ここまで使い込まれれば、トラックも満足なことでしょう。
小型車では、乗客を乗せられるように荷台の代わりにキャビン(もちろん窓つき)を搭載し、中にベンチシートを配置した乗合トラックがかなり多く見受けられます。これはジプニーの後継車のひとつの形なのでしょう。
マニラ首都圏の渋滞緩和策として、大型トラックは日中は通過できず、夜中になるとマニラに入るため、夜の各料金所は大型トラックでいっぱいとなります。整備状態が悪いため、その騒音は夜の静寂を打ち壊すかのごとくで、また排気ガスにおいては明け方には朝もやのように残り、今日も曇りかと思うほどに見通しが悪くなります。これもマニラが24時間活動し続けているというひとつの証でしょうか。
《乗用車について》
乗用車の基本は4ドアの小型車で、軽自動車、2ドア車、スポーツカーは極めてまれです。
最近の特徴として、アウトドアが特に盛んなわけではないのに、RV車が増加傾向にあります。これは、当地の気象と道路事情からきていて、雨が降ると道路が冠水し川のごとくなり、この状態になっても走破できる地上高のある総輪駆動車が有効と考えられているからでしょう。
乗用車の世界にも変化が見られます。ジプニーの世代後継車となるであろう小型乗合自動車です。これは、タイ、インドネシアでアジア戦略車として開発・市場投入された車両に、フィリピン流味つけをしたエアコンつき10人乗りのボンネット型小型廉価乗合乗用車で、自家用、乗合用としてその需要は拡大基調にあります。当地の経済成長のひとつの現れを、このような変化からも垣間見られます。
《ジプニーについて》
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| 大型・小型トラック2台とも現役選手です。ここまで、こんなになってもまだ働く。大事にいつまでも使われています。
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次にフィリピンの代名詞とも言われるジプニーです。これは、米軍払い下げのジープを乗合自動車に改造したのがこの名前の由来になっています。近距離輸送の中心的存在で、ジプニーなくしてフィリピン経済は成り立たないとまで言われています。
この運行システムは、乗りたいところで乗れ、降りたいところで降りられるという、利用者からみれば究極の形態を取っています。反面、どこでも停車することで車の流れを妨げ、渋滞に拍車をかけています。このため、政府はジプニー運行の各種規制を打ち出したり、大型バスの免税処置等の施策で渋滞改善を図ろうと何度も試みていますが、その都度「ジプニー組合」の反対にあい、規制の撤回を繰り返さざるを得ない環境下にあります。ジプニーは、当地でその地位を築き上げ、これに関わる就業人口も多く、簡単には規制するのがむずかしいからです。
《バスについて》
中・長距離輸送を担う大型バスは、日本からの輸入中古バスが主体となっています。新車の現地生産規模は、年間約1,000台程度で、路線バスはエアコンなし、中・長距離バスはエアコンつきとなっています。
日本からの中古バスは、ドアとハンドルを換えただけで、日本語の看板、塗装、バス会社名をそのまま残し、「このバスは日本製冷房完備車だぞ」と誇らしげに運行されています。しかし、現地製のかなり走り込んだバスの多くは、車両の整備状態が行き届いておらず、ドアなし、窓ガラスなし、ひどいものになるとフラップ(荷物入れのカバー)をばたつかせながら走っているものもあり、危ない限りです。
手前みそになりますが、当社製のバスはその美観を落とすことなく、フィリピンにヨーロッパを思わせるかのように、優雅に運行されています。
《その他》
今度は田舎に目を移してみましょう。その田園風景は日本と同じように映ります。違いと言えば椰子の木が目につくことくらいでしょうか。
ここでは、ジプニーのほかにトライスクルと称した乗合バイクと自転車が走っています。これは、バイク・自転車をベースに乗合用のキャビンをつけた改造三輪車です。驚くことに、最大乗車定員は10〜12人とも言われています。
このように、動くものは何でも乗合に仕立てる、この知恵は素晴らしいものと感心しています。ときには、トラックの荷台、列車の屋根でさえも乗合にしてしまうお国柄なのです。フィリピンでは、いつも何かに乗って移動しており、歩いている人はあまり見ません。
以上が私の目を通して見た、感じたフィリピンの陸上乗り物事情です。
毎日のように渋滞が始まると、道幅の許す限り車であふれ、ミラーとミラーがぶつかると思うくらいまでに接近します。その反面、接触事故が少ないのは、お互いの譲り合いが紳士的に行われているからであろうと思われます。
それでは、いざとなっても決してあせらない、急がないというおおらかなマインドを持ち、将来に未知数の発展の可能性を秘めた常夏の国フィリピンからさようなら、マブハイ。
(くまがい しげお)
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