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駐在員・見てある記(3)
Pakistan・Now
パキスタンのトラック事情
岡村 正保
〔日野パックモーター 社長〕
昨年10月にパキスタンのカラチに赴任して早1年になろうとしていますが、カラチに到着した晩のことは昨日のように思い出されます。
空港を出てホテルに向かう道すがら、積み荷を満載してラクダやロバに引かせた荷車が数多く行き交う光景を今でも忘れられません。そのときは夜が遅かったせいと思ったのですが、車の数が少なく、やけに荷車が目立ち、100年ほど昔にタイムスリップした感じのカルチャーショックを受けると同時に、ここでトラックを売るのはたいへんな仕事と直感した次第です。
翌朝、初めて街を走ってまた驚かされたのは、車の型式の古いこと古いこと。前夜は暗くて気がつきませんでしたが、私が中学生のころに見た昭和30年代のコロナやブルーバード、はたまた私が日野自動車に入社するだいぶ前に生産を打ち切った懐かしの名車、日野コンテッサもまだ健在で走っているのです。コンテッサをご存じない読者もいらっしゃるかもしれませんが、超驚きの世界なのです。
トラックもしかり、40年以上前のベッドフォードが今でもゆっくりと走っています。そこで、パキスタンの自動車市場を一言で表現すると、自動車の「動く博物館」ということになります。昔の車がそのままに残って、しかも実用に供されていることは、自動車の歴史を理解するうえでとても役には立ちますが、現実の市場としてみた場合、皆さんはどうお感じになりますか。さて、本題の当地のトラック事情に入ります。
ご当地トラック事情1−過積載のこと
これだけ古いトラックなら長年、大事に使っていると思いきや、かなり酷使しており、過積載ではパキスタンの右に出る国はないと思います。最大積載量(GVW)15トンの車を改造し、リーフスプリングを7〜8枚増やし、アクスル軸を追加したりして、積み荷を40トンから50トン載せてタラタラ走るのです。
運転手はタイヤの上に自分の握りこぶしを当て、フェンダーが握りこぶしに触れるまで積み荷を載せるのが、彼らの経験に基づく測量習慣とは驚かされます。そして昼間は40度を超える日々が続くので、オーバーヒートをおそれて夜間にのろのろ走って、港町カラチから1,000km先のラホール方面に向け走っていくのです。
また休憩時には、酷使するトラックをいたわってかフレームをジャッキアップして、支え棒を当てリーフスプリングを休ませているトラックも多く見かけられます。またパキスタンの北部山岳地帯では、山の麓で荷物満載のトラックを牽引して補助する「お助けトラック」稼業という商売もあると聞いています。
以上は過積載のお話ですが、大きなかさ物を運ぶトラックも目立ちます。週末に行くゴルフ場はカラチ郊外にあるのですが、そこから帰るときによく出くわすのが、フラットベッドのトラックに牧草を車幅の2倍半ほども脇にはみ出して運んでいるトラックです。そんな車の後についたらたいへんです。そのトラックを抜いて前に出ることができず、くだんのトラックは2車線の道路を幅いっぱいに30分以上も独占して走ります。せっかくいい成績を出した週末ゴルフの爽快な気分もぶち壊しにしてくれる、こういうやっかいなトラックも多いのです。
このように、当地では道路交通法があってもないに等しい、はなはだ遺憾な状況であります。交通警察官に捕まって、運転手といろいろ解決方法につき前向きに話し合っているのをかいま見るにつけ、過積載の習慣はなかなか止まないと思っています。
ご当地トラック事情2
−ペシャワールボディーのこと
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| キンキラの「ペシャワールボディ」
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当地には大手の陸運会社はほとんどなく、トラックは1台1台オーナーが別々で、それぞれのオーナーはとても大事にトラックを飾っているのです。何せ30年以上使うつもりで買ったお宝トラックですから、まるで自分の子どもにきれいな服を着せるのと同じように飾り立てます。掲載した写真でもご覧になれますが、車にかつらをかぶせ、派手派手しくペイントで模様を描き入れ、バンパーの下にはレースの首飾りをたれ下げキンキンにお化粧して走っています。まさしく満艦飾です。ほとんどの運転手並びにオーナーは、アフガニスタン沿いのペシャワール地方に拠点を構えている勇敢なパターン民族で、かの有名なカシミールで戦っている戦士もこの地の出身者が多く、勇敢なトラックのイメージをこの種のキンキラボディーで表現しており、当地では「ペシャワールボディー」と呼んでいます。
ご当地トラック事情3
−ハーフダンプのこと
今までご説明したトラックは、いわゆる平カーゴトラックです。この国のトラックは平カーゴかタンクローリーしかありません。特にカラチの街で目立つのは水タンクローリーです。カラチ人口1,300万人の70%の家には、水道があっても水不足で水が出る日は少なく、ほとんどの家はタンクローリーから水を買うことを余儀なくされているのです。
そして珍しいことに、ダンプトラックを見かけることはほとんどありません。では砂や砂利を運ぶトラックを頼むときはどうするかと言えば、「ハーフダンプ」というのを頼むのです。なんということはない普通の平カーゴトラックに、シャベルを持った人足が5〜6人トラックに乗ってくるのです。積み降ろしは人件費の安い人間が、ダンプのシリンダーの代わりを務めるというわけです。
いろいろとお話ししてきましたが、パキスタンのトラック事情はわれわれ日本人の常識では考えも及ばないことが多々あります。ですがこれも文化の問題です。私たちの使命は、パキスタン経済のさらなる発展のため、欠くことのできない生産財としてのトラックを供給していくことです。その目的のためにアフターセールスに力を入れながら、なんとか当地の文化と折り合いをつけ頑張っている今日このごろです。
(おかむら まさやす)
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