●二輪車の利用を阻害する
高速道路の利用しづらさ
この日本とヨーロッパとの二輪車の利用状況の差は、ことに高速道路の利用環境の違いに起因するものと言って差し支えないだろう。
1)高すぎる高速道路利用料金
その第1点は、日本と欧米との高速道路の利用料金の違いである。日本では、高速道路をはじめとする有料道路に「二輪車」の区分が設けられていることは珍しく、ことに高速道路(高速自動車国道)の利用料金は、「軽自動車等」に区分されていて、いわば四輪自動車と同額という状況だ。
それに比べて、欧米では高速道路はもともと無料の国が多いうえに、料金が徴収されていても低額に抑えられている。99年に自工会が調査したところによれば、有料の国の場合に高速道路を100km走行したときの日本との料金の差は、ヨーロッパが日本の6分の1から4分の1という金額となっている。
2)高速道路の2人乗り禁止を解禁に
第2点としては、日本の高速道路では二輪車の2人乗りが禁止されていることも、大きな要因として横たわっている。
日本でも欧米でも、250ccを超えるような大きなオートバイは、ツーリング(旅行)がユーザーの大きな楽しみになっているが、高速道路の2人乗りが禁止されているということは、要するに「2人で遠くに行く」という楽しみ方はほぼ“できない”といっても過言ではない。
先に紹介したイタリアのコモ湖も、スペイン・バレンシアのサーキットも高速道路のすぐ近くにあって、ライダーは恋人や夫婦、そして友人たちと気軽に高速道路を走ってきて、観光やレース観戦を楽しんでいる。
オートバイというのは、走行性能で考える限り、自動車と同等の性能を持っている。ということは、自動車と同じように「遠くに出かける」ということも楽しみのひとつとなる。しかし、日本の場合には、だれか親しい人と一緒に二輪車で出かけようとしても、高速道路は2人乗りが禁止されているので遠くに行くことは不可能。そして、ひとりで出かける場合であっても、4人乗れる四輪自動車と同額の料金を徴収されるのだ。
3)不満の多い「高速道路の利用環境」
NMCA日本二輪車協会では、各地で開催されるイベントやインターネットなどの場で、二輪車ユーザーなどに対してさまざまなアンケート調査を行って、二輪車に関する意見を募る活動を行っているが、そのなかで「二輪車の利用環境のなかで何が不満か」を聞いた結果を見ると、ことに「通行料金」「2人乗り禁止」など高速道路での利用環境について不満を持っている人が極めて多く、利用の障害になっていることがうかがえる。
表1 国別高速道路の料金(100km走行当たり)
|
二輪車 |
乗用車 |
| 日本 |
2,118円 |
2,610円 |
| イギリス |
無料 |
無料 |
| フランス |
379円 |
633円 |
| ドイツ |
無料 |
無料 |
| イタリア |
438〜522円 |
438〜522円 |
| スペイン |
553円 |
553円 |
| アメリカ(カリフォルニア州) |
無料 |
無料 |
注:各国為替レートは、2000年1月25日東京三菱銀行売値による。
資料:自工会調べ
図3 二輪車の日常的な利用環境での不満(NMCA日本二輪車協会
調査)

注:オンロードバイク所有者1,623人(複数回答)
2000年7月鈴鹿8時間耐久レース会場で調査 |
●高速道路料金の改善についての要望

2人乗りは街の風景にはまっている(イタリア) |
自工会をはじめ二輪車業界では、こうした二輪車の利用環境について、改善を求める方向での活動を、ずっと以前から継続して行っている。
そのうち、まず高速道路料金については、これまでにもパンフレットやマスコミ向けの資料などを発行、料金適正化について社会的なアピールを行ってきているが、99年には、政府の規制改革委員会を通じて高速道路などの有料道路に二輪車独自の料金区分を設けるように要望してきている。
そして、昨年には、(社)全国軽自動車協会連合会と国内二輪車メーカー4社の連名で、国土交通省と、日本道路公団、首都高速道路公団などに直接、「二輪自動車の高速道路等通行料金に関する要望書」を提出し、善処を求めている。
二輪車は四輪自動車に比較して、明らかに車体も小さく、道路への損傷度も少ない。さらに1台での利用人数を考えても少ない。高速道路などの料金設定の根拠とされている「原因者負担」「受益者負担」などの面から考えて、現在よりも相当に少ない通行料金設定が望ましいという考えによるものだ。
●高速道路二輪車2人乗り解禁への取り組み

ダミー人形による高速道路2人乗り体験調査 |
高速道路についてのもう1点の課題である2人乗り禁止については、92年から自工会が解禁要望を警察庁に対して提出している。
また、98年には自工会が日本の高速道路を利用して、ダミー人形による「高速道路模擬2人乗り体験調査」を行っている。これは、日本大学理工学部の長江啓泰教授(当時)の監修の下、高速道路での二輪車2人乗りの安全性について検証調査を行ったもので、「高速道路での二輪車2人乗りは、1人乗りの場合と同等の安全な走行が可能」という結論を得ている。
さらに、自工会では前記のように2000年9月にヨーロッパ現地調査団を派遣して、高速道路での二輪車2人乗りの実態調査を行っているが、その報告書での結論は、以下の通りである。
1)ヨーロッパでは高速道路の2人乗り利用が極めて多い。
2)高速道路での2人乗り事故死者数は少なく、ドイツでは交通事故死者数の0.08%、イタリア・ロンバルディア州では0.1%にすぎない。
3)高速道路での2人乗り事故発生率は、1人乗りよりも少ない。
4)高速道路の設計基準などの安全性は、日本もヨーロッパも同等。
なお、高速道路の2人乗り禁止については、国内の二輪車業界からばかりでなく、在日米国大使館から政府のOTO(市場開放問題苦情処理推進会議)に対して、「米国からの二輪車の輸出にとって非関税障壁となっている」とする訴えがなされるなど国際問題化しており、早期の対応が求められよう。