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記者の窓

「人生楽ありゃ苦もあるさ」

松元 洋平
[日本工業新聞社]

●僕が自動二輪免許を取得したのは16歳のとき。バイクとのつき合いはかれこれ14年になる。こんなにも長い間バイクに乗り続けているのは、言うまでもなく、楽しいからだ。そこで、「なぜこんなにもバイクに乗るのが楽しいのか?」と自分に問いかけてみた。
 僕のバイクの楽しみ方はもっぱらツーリング。僕のバイクの旅はまず「晴れ乞い」から始まる。究極の雨男の僕はひたすら天気が良いことを願う。気分は遠足前の幼稚園児とまるで同じだ。趣味は人を童心に帰してくれる。しかし、ただ「晴れるといいな」と思っていたのではあっさりその願いは却下されてしまう。なんせ、台風の直撃が少ないと言われる北海道にまで台風を連れていった男である。「晴れてくれ、いや曇りでいい」。この際、贅沢は言わない、謙虚にいこう。それにしても、曇りの天気がこんなに楽しいなんて…。

●さて、バイクで旅に出ると渋滞知らずなのでうれしい。ずらーっと並んでいるクルマの列を横目に僕と相棒はすいすい走る。休日の高速道路の大渋滞でも「高速道路」の名の通りの走りができる。走りの流れが切れないというのはなんとも快感である。クルマに乗る人々の羨望のまなざしを一身に受ける瞬間だ。ヘルメットの中の顔は思いっ切りにやけている。こんなとき、検問などでヘルメットを脱ぐような事態でも起きれば、表情の緩みすぎで怪しまれそうだ、なんてくだらないことまで考えてしまう。
 しかし、そんな快感もつかの間、雲行きが怪しくなり、とうとう雨が降ってくる。先ほどの人々のまなざしがいっぺんに哀れみと嘲笑に変わる。立場逆転なり。屋根に守られた人々は快適な箱の中、雨に濡れることはない。こちらは言うまでもなくずぶ濡れだ。しかし、雨にさらされても、申し訳ないといった表情で「走る」という仕事をひたすらこなす職人気質の、そして駐車場所もとらないバイクをどうして責められよう。そんなわけでひたすら僕はバイクとともに雨に濡れながら走る。

●やっとの思いでサービスエリアに入り、休憩を取る。熱いコーヒーを飲みながら相棒の仕事ぶりを称えようとガソリンタンクをのぞく。するとまだ彼はまったく空腹を感じていないではないか。なんともかわいい。そう、数あるバイクの利点のなかでも、“燃費が良い”ということは声を大にして言っておきたい。
 結局、バイクに乗るのが楽しいのは、こういった「苦楽をともにする」ことを体感できるからであろう。僕にとってバイクのない生活なんてレモンのないタン塩のように味気なく、さくらんぼが入っていないクリームソーダのようにわくわくしないものなのだ。

(まつもと ようへい)


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