レースで熟成された技術
レースの世界でも、ホンダはF1で世界の強豪として評価されている。ターボエンジン、自然吸気エンジンともに、コンストラクターズチャンピオンとなってレースの世界でトップランキングである。
アメリカのカートでも最強エンジンのひとつである。
いつの時代も、高回転エンジンの基礎技術はF1から得た技術が多い。レースという極限テストを行っているわけだから。
現在のF1は、量産車との技術のつながり、量産車への技術のフィードバックはかつてに比べて薄いと言われているが、しかしエンジニアを鍛え上げる手段として非常に評価されている。
来年からは、トヨタがF1に参戦する。
サーキットレース以外では、4輪駆動の先駆メーカー、富士重工が世界のラリーで、三菱のパジェロは砂漠ラリーの強豪である。ラリー車は市販車にフィードバックする技術が多くある。これまでも高性能車の耐久性、ボディ強度、サスペンションの熟成に大きな成果を上げている。
21世紀に引き継がれる数々の技術
21世紀に要求される低公害・低燃費技術、また従来エンジンのバルブタイミングコントロール技術は、自動車先進国にライセンス供与が多いのも見逃してはならない。
●リーンバーン
燃費改善の手法、希薄燃焼技術では、成層燃焼のCVCCがアメリカのマスキー法合格第1号エンジンであった。
また、ガソリンをシリンダー内に直接噴射する技術は電子制御で精密に燃費制御して、低公害、低燃費を両立させたエンジンとしている。50年代の燃料直接噴射は、過剰の燃料を強制的にエンジンに押し込み、燃え残りはそのまま排出した。21世紀の燃料直接噴射が、エンジンが要求する燃料の「要求量」を超精密制御して供給するのとはまったく思想が違うエンジンだった。
電子制御が得意な日本の産業、自動車メーカーが誇る分野であろう。
●ハイブリッドシステム
ハイブリッドシステムは、現在はガソリンエンジンと電気モーターのコンビだが、将来はディーゼルエンジンと電気モーターの組み合わせもあり得る。交通環境や燃料供給のインフラによっていろいろな「ハイブリッド」が考えられるだろう。
世界では最初、ハイブリッドに冷淡であった。ところが、海外のビッグメーカーが「プリウス」を見て、急遽、ハイブリッドの開発を急ぐことにしたのは、プリウスの完成度と潜在能力に驚いたからと伝えられている。
燃料電池車、または水素自動車が実用化する近未来までの隙間を埋める動力源となり得る技術で、日本が先行しているのである。
●ディーゼルエンジン技術
日本では“悪役”に見られるディーゼルエンジンも、いすゞが全GMグループに提供している。効率がよく、二酸化炭素の排出が少ないディーゼルエンジンは、日本でも粗悪軽油を追放すれば必ず普及が進む。東京都知事のディーゼルエンジン追放政策は、燃料改善のきっかけとなり、長期的にはいい傾向だと思う。日本にディーゼルエンジン時代が来たときに、日本の自動車メーカーは即対応できるのが心強い。
車両制御技術の進歩
日本独自の自動車技術はまだまだある。
ヴァンケルロータリーエンジンはマツダだけが実用化した。フォードがマツダのシンボル技術として温存するのも世界唯一の技術だからだ。
まだまだ日本の技術は活躍している。アメリカで、数社の自動車メーカーが危険な自動車を生産したとして、いくつかの懲罰的罰金を科した例がある。今となっては、その決断のおかげか、自動車の安全技術と装備は飛躍的に進歩した。
車のコントロールのアシストをコンピュータで行う「車両制御」がその例だ。スピンを抑え、正確に4輪の回転を制御してドライバーの判断の遅れや運転ミスを助けてくれる。年輩の名人気質のドライバーはコンピュータ制御のドライビングを嫌がるが、それは自動車を趣味の道具と思っている少数派の意見でしかない。これだけ自動車が普及すると、ドライバーは運転が下手である、という前提で自動車を作って欲しい。
“日本発”の生産技術
今、日本車の生産技術が国際化したいい例がいくつもある。
今後、世界的な実用経済車の主流となるであろう1300〜1500cc乗用車では、デトロイトGMがボディやサスペンションを設計し、日本で生産される「シボレー」。あるいは、オペルの基本ボディにアメリカのエンジンを搭載、サスペンション設定は日本メーカー、生産はタイで行うような車、そしてブランドは日本。
このような「国際車」または国籍不明車は今後増えるだろう。
ドイツ車、英国車に採用されている日本のオートマチックトランスミッションも高い評価を受けている。
日本発の生産技術と言えば「かんばん方式」があまりにも有名だが、ジャスト・イン・タイムの生産方式はデファクタ・スタンダードと呼んでもよいほどで、世界でアレンジされ採用された。
また、現在の車が、部品の設計から生産までコンピュータを使って開発されるのは常識となった。CAD/CAMである。CADは64年にGMが最初に導入したと言われるが、日本メーカーも相次いで導入、現在では量産プレス型加工に至るCAD/CAMデータの一元化が実現している。
日本メーカーはヨーロッパ、アメリカに生産拠点や研究所、デザインスタジオを持っている。その仕事の進行は、ラインでつながり、CAD/CAMなど各種データも共有できるので、世界規模で進行して開発スピードが速くなっている。
「世界を走る」二輪車技術
モーターサイクル(二輪車)は生産量では中国、インドの台頭が著しいが、趣味性の強いモーターサイクルは日本やアメリカなどの美意識、個性が目立つ。大型スクーターの台頭も話題のひとつだ。
現在、二輪車の生産は世界各国で現地生産されており、デザインは“現地仕様”。しかし、メカニカルな部分には日本の技術が、その国その国で生かされている。
二輪車は、電子制御のブレーキ力配分、トラクションコントロール、アンチロックブレーキなどの安全技術の導入が目立つ。これらの技術は現在のところ、大型車から採用されているが、コストダウンが進めば小排気量二輪車まで下りてくるだろう。
現在、自動車生産国は、それぞれの個性を主張しながら、良い技術は国境を越えて採用される。技術提携という形でも、すばやく導入されている。技術の革新があまりに速いからである。21世紀の新世代エンジン、制御技術も国境がない時代になるのだろう。
今、乗用車の需要は、経済車と高級車に完全に二分化されつつあるが、世界経済の安定が自動車の未来像をどう変えるのだろうか?
(そのべ ゆたか)