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世界の工場がダイナミックに連携するフレキシブル生産システム

●欧州でも2000年から生産体質改革が始まり、フレキシブル生産システムが導入されましたが…。
 ホンダの次世代の工場はどうあるべきか、ということを探究し始めた結果、「グリーン・ファクトリー」いうコンセプトが打ち出されました。「グリーン・ファクトリー」構想を具体的に説明しますと、顧客に対して、その期待に応えるためには、安価で品質の良い車をできるだけ早くお届けする。また、従業員に対しては、より働きやすい職場環境を実現する。さらに社会に対してはゼロエミッションの実現やエネルギー効率の向上等によって地球環境にやさしい、この3つを備えた工場づくりが日本を中心にスタートしました。
 この一番目の目的を達成するための手段が、市場の変化に柔軟に対応できる「フレキシブル生産システム」で、世界中の工場を同質にしたうえで、ダイナミックに連携することが狙いです。それに取り組むには多大な投資が必要になるわけですから、溶接、塗装、組立ライン等あらゆる現場の知恵を集結させ、すべての面において高効率を追求しなくてはなりません。

●フレキシブル生産システムによって、実際にどのように生産の自由度が拡大するのでしょう?
 日本の例を挙げますと、鈴鹿工場で立ち上げた車種をかなり短期間で狭山工場に移管して生産した実績があります。理屈のうえでは、世界中の工場を同じ体質にしておけば、どこででもどの車種でも作れるようになるわけです。世界中で生産台数の総量が決まっていれば、こちらの工場でキャパシティが足りなければ、あちらの工場で足りない分を作るというような柔軟な生産が可能になり、より早くお客様に車を届けられます。日本国内のホンダの生産拠点では、すでに需要の変化に応じて生産機種の引っ越しは自由自在と言えます。
 世界中の工場を同質にするというのは机上論としては簡単そうですが、実際には各工場は設立時期によって設備が異なりますから、そこで同じ車を作るということは、非常に大がかりな計画となるわけです。課題としては大きいですが、乗り越えた暁には非常に高い自由度が約束されます。

加速するグローバル戦略「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」


シビック生産ライン

●「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」に基づくホンダのグローバル戦略とは、「市場の近くで生産する」という考えをさらに進めたものですね。
 まさにその通りです。「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」は、これまでの「需要のあるところで生産する」という理念をさらに一歩進めて、フレキシブル生産システムを土台として、世界規模の視点で最適生産体制を再編するというものです。完成車だけでなく部品までも世界中のホンダの工場で融通し合い、コスト競争力を高めていこうというグローバル戦略です。そして、世界中の自立したホンダの各拠点からネットワークを駆使してお客様のニーズにグローバル規模で応えていくという、この動きはますます加速していくでしょう。

●吉野浩行社長が昨年11月末の新型アコード発表の際に、「中国やタイで生産したホンダの車に乗ってごらん。すぐわかるよ。(日本車と)同じだから」と発言しておられたのが、非常に印象的でしたが、これこそ「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」に裏づけされた自信なのでしょうね。
 例えばCR−Vについて言いますと、狭山工場での生産が手いっぱいになったため、HUMでも生産を始め、欧州から北米に輸出しています。
 「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」が招いたともいえるこの状況は、実はわれわれにとってたいへんなチャレンジです。と言うのも、北米市場のお客様は日本製と欧州製の品質を比較することが可能になりますから。HUMは創業10年の比較的若い工場で、「狭山に負けるな」という良い意味での競争心が生まれ、いい刺激になりました。ここ1年のHUMでの品質に対する意識向上は目覚ましいものがあり、おかげ様で米国市場からも「HUM製は狭山製に劣らない」という評価をもらっています。とは言え、ホンダの日本国内の工場はどんどん進化していますので、日本の進歩に追いついていくための、たゆまぬ努力が必須です。

●シビックは、欧州から日本に輸出されていますね。
 そうです。新型シビック3ドアの生産も日本からHUMに移管しました。これによりシビック3ドアは世界中で英国でしか生産していない、いわばHUMの特産品となりました。そのなかでもタイプRは英国から日本に輸出されています。
 このシビックタイプRという車はスポーティバージョンなのですが、わざわざ日本の雑誌社が「シビックタイプRのふるさとを訪ねて」というテーマでHUMに取材に来るほど、マニアックなファンを魅了している車です。
 シビックタイプRは欧州内でも特に英国で評判が良く、3ドアの半分に近い販売台数を占めています。シビックタイプRの例のように規模は小さくても世界各地に欲しいというお客様がいれば、地域ごとに生産するわけにはいきませんから、最も需要のある欧州で作って、ここから輸出していきましょうという発想なんです。地域によって仕様が違いますから、たいへんではありますが。

●この「メイド・バイ・グローバル・ホンダ」が進むと日本国内の産業の空洞化につながると心配する声が出てきませんか。
 それはむしろ逆ですね。生産拠点間の移管に高い柔軟性を持たせることによって、国内の空洞化が起こらないようにしているんです。
 そもそも工場というのは「重い施設」です。多額の投資と維持費がかかり、多くの従業員を抱えますから、仕事を確保し、稼働率を安定させることが、工場存続のために必須の課題となります。その点で、労働力を十分に活用できるよう、フレキシブル生産体質により容易に最適生産配置が可能となるホンダの方向は、空洞化を防ぐ方策となります。

国境を越えた部品調達

●現地サプライヤーとの関係はどのように構築されていますか。
 ローバーとの関係が解消したことで制約がなくなり、われわれが自らの基準でサプライヤーさんを選べるようになりました。
 現在、250社ぐらいのサプライヤーさんとおつき合いしていますが、むずかしい部品や重要な部品については、かなり日系の部品メーカーさんに供給していただいています。QCD(品質・コスト・納期)という観点で、サプライヤーさんとの関係は当時より改善してきています。
 現地のサプライヤーさんにとって、ある程度のボリュームがないと受注は魅力とならないわけですが、今後の生産増加に伴い、スケールメリットを活かした部品発注、生産が期待できるでしょう。ただし、スケールを求めてどの車種にも同じ部品を使う方向に進みますと、個性が失われるという結果を招くことにもなりかねません。今与えられた規模のなかでの最適な作り方を、サプライヤーさんとともに追求していきたいと考えています。

●ここ数年、UK生産のコストアップの要因として為替変動の影響が大きな問題となっていますが、ホンダさんの場合はEU圏外からの部品調達について、どのような見通しを持っておられますか。
 ある程度の大物は工場の周辺、つまり英国内で調達せざるを得ません。しかし、それ以外の部品についてはEU調達に切り替える方向で進んでいます。ただし、モデルの途中でサプライヤーさんを変えるのはむずかしいですから、徐々にEU調達を増やしているところです。もうひとつは、UK調達でも取引をユーロ建てにする手法があります。しかし、これらにも限界があり、アジアを含めてもっと競争力のある地域から部品調達をするという方向にシフトしていると言えます。現実に、シビックやCR−Vはインドから板金部品を、また中国からエンジン部品を調達し始めています。最適生産拠点からの調達はロジスティクスの費用を含めても見合うものがあるということです。EUだけに限らず、アメリカも含め世界中の生産拠点で最も競争力のある地域から部品を調達することが、ホンダの強みを活かすことにつながります。

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