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2.米国におけるテレマティクスの課題と今後の展望

 シカゴITS世界会議では、Navigation Technologies社やTele Atlas社が交通情報サービスのデモンストレーションを行ったが、交通情報収集のためのインフラ整備には膨大な費用と時間が必要であり、これらのサービスが今後急速に普及するとは考えにくい。当面、OnStarのひとり勝ちの状況が続くものと見られるが、03年9月に失効するTEA-21(Transportation Equity Act for the 21st Century)に代わる連邦政府の陸上交通関連の予算法SAFETEA(Safe, Accountable, Flexible and Efficient Transportation Equity Act of 2003)では、安全とセキュリティを最重要課題として捉え、情報ネットワークやリアルタイム交通情報収集システムの整備が盛り込まれている。その整備効果によって、交通情報も次第に充実していくものと思われる。
 一方、テレマティクスの進展に伴い、プライバシーやドライバーディストラクション(運転以外の行動により注意が散漫になること)の問題が急浮上し、関係者の間で大きな論議の的になっている。特に後者の問題は、製造者責任や連邦安全局(NHTSA)の行政責任なども絡んで議論が複雑化しており、今後のテレマティクスの展開にも大きな影響を及ぼすものと思われる。このため、より運転に影響の少ない音声入出力インターフェースの開発や、HMIに関するガイドラインづくりなど、問題解決のための努力も続けられている。自動車メーカー12社が、02年4月にまとめたガイドブックでは、運転支援システムを除く旅行者情報やインターネットに関して、機器の操作のために視線が外れる時間を2秒以内とすること、機器の操作は20秒以内に終了することなど、24の原則を定めている。

3.欧州のテレマティクスの現状

 RDS-TMC(Radio Data System-Traffic Message Channel:FM多重放送による交通情報サービス)による交通情報サービスに始まった欧州のテレマティクスであるが、最近では自動車メーカーによるテレマティクスの動きが活発になっており、BMWやDaimlerChryslerをはじめ、多くの自動車メーカーが交通情報や経路案内などのサービスを開始している。
 GMはOnStarの欧州版を提供する計画であるが、米国ではWingcastを中止したFordも、欧州ではPSAやRenault、日産と共同開発する計画である。
 米国ではGMと提携しているトヨタは、欧州ではVWとの提携を模索していると伝えられる。こうした最近のサービスには、専用の車載装置やPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビなどが用いられている。
 交通情報サービスの代表的な企業がTraffic-master社である。同社は、音声のみに限定し低廉な車載装置を使った交通情報サービスを、BMWやRenault、Citroen、Vauxhall、トヨタ、三菱、富士重工などの自動車メーカーや自動車クラブ、レンタカー会社などに提供している。


Tegaron Scout
(出典)T-Mobile Traffic Website

 PDAを使ったシステムは、カーナビ(オンボードナビ)と区別するため、一般にオフボードナビと呼ばれている。日本などと比較してカーナビの普及が遅れていることや、カーナビが高価であることなどから、オフボードナビが用いられる。オフボードナビを使った代表的なサービスは、Trafficmaster社のほかT-Mobile Traffic社などが提供している。Trafficmaster社のPalmは、その名の通りPalmのPDAを利用したサービスである。ドイツテレコムグループのT-Mobile Traffic社がドイツ国内で提供するTegaron Scoutでは、Hewlett-Packard社の iPAQが用いられる(写真)。

 Tegaron Scoutは、主要ルートに設置したセンサーで観測した交通情報を加味した経路案内サービスを提供する(図1)。
図1●Tegaron Scoutのサービスイメージ

(出典)T-Mobile Traffic Website


CarCompanion
(出典)DaimlerChrysler Service Website

 97年にT-Mobile Traffic社の前身Tegaron社をドイツテレコムと合弁で設立したDaimlerChryslerは、提携解消後は独自のサービスCarCompanionを03年に開始することを計画している。ベルリンやフランクフルトなど7都市でサービス中のGSM向けの情報提供サービスCityCompanionを発展させたもので、PDAと音声インターフェース機能を組み合わせたものである(写真)。
 欧州も、米国と同様、交通情報収集のための既存インフラはほとんど整備されていない。このため、Trafficmaster社は、英国においては政府と独占的な契約を結び、8,000マイルの高速道路や幹線道路に約7,500台のセンサーを設置し、独自に交通情報の収集を行っている。こうしたインフラ整備に代わる交通情報収集方式として注目されるのが、FCD(Floating Car Data)である。
 FCDは、走行中の車両によって計測された交通流のデータを通信によって情報センターに集約するもので、日本ではプローブ情報システムとも呼ばれる。当初は、ナビゲーションに使われるデジタル地図の整備が遅れていたため、車自らが地図データベースを生成するとの発想でFCDのコンセプトが生まれた。現在ではデジタル地図の整備が着々と進み、3年から5年後には全欧州がカバーされる見込みであり、FCDの目的も地図データの収集から交通情報の収集へと変わってきた。
 交通情報収集のセンサーとしてのFCDは、すでに実用化の域に達しており、英国のITIS(Integrated Transport Information Services)社は、13,500台のFCD装置を搭載した車両のデータをもとに、交通情報や到着予想時間のサービスを行っている。これまですべてのモデルにTrafficmaster社のサービスを採用していたBMWは、7シリーズ用にITISのRDS-TMCを採用した。GMもOnStar用に同社と契約、またトヨタもRDS-TMCで提供される同社の交通情報をもとに動的経路誘導サービスを計画しているとされる。
 02年3月のCeBIT(世界最大のIT関連展示会)では、VWのテレマティクス部門Gedas社がFCDによる交通情報収集をデモンストレーションしたが、04年のアテネオリンピックではECが400万ユーロを提供し、このシステムをベースに交通管制や交通情報提供が行われる計画である。

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