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特集 カーテレマティクス

カーテレマティクス情報機器の使用時における安全性の確保
画像表示装置の取り扱いに関する自工会ガイドラインについて

広田 正治
[自工会 ITS技術部会HMI分科会 副分科会長]

はじめに

 カーテレマティクスの登場により、自動車内部と外部のコミュニケートに新しい手段が与えられ、情報の量や質を飛躍的に向上させることが可能となった。言い換えれば、自動車もユビキタス社会の一構成として機能するようになった。しかし、テレマティクス機器と乗員、特にドライバーとのインターフェースは、まだ画期的な進歩を迎えていない。
 運転中のドライバーにとって、自動車を安全に走行させることは第一の責務である。ITS技術の進歩により、ドライバーの負荷を軽減するシステムも開発、実用化されつつあるが、運転中でもテレマティクス機器を自由に扱えるようになるには、まだ多くの技術革新を待たなくてはならない。テレマティクスの実用化が始まる一方で、国内外でDriver Distraction(運転以外の行動により、ドライバーの注意が散漫になること)の問題が、従来以上に取り上げられるようになったのは、ある意味当然のことだろう。
 この問題は、カーナビゲーション・システム(以下、カーナビ)の普及が始まったころまで遡ることができ、かつテレマティクス機器とドライバーとのインターフェースが、カーナビとのそれと大きく変わっていないため、本質的に同じと言うことができる。
 本稿では、カーナビの普及時に(社)日本自動車工業会(以下、自工会)が策定し、その後技術進歩に応じて何度か改訂してきた「画像表示装置の取り扱いについて」を振り返りつつ、国内外の最近の動向を紹介する。

●走行中のテレマティクス機器の使用

カーナビ・VICSの普及

 カーナビの原型となるシステムの商品化が始まったのは1980年代の初めからだが、本格的に市場が立ち上がったのは、80年代終わりから90年代に入ってである。技術的には、GPS受信機、TFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイ、CD−ROMプレーヤー、高性能組み込み型CPU(中央演算処理装置)といった部品が自動車で使えるようになったこと、制度的にはデジタル地図データベースが整備されてきたことが引き金となり、まず自動車メーカーが高級車にオプション設定を始め、続いて多くの電器メーカー、AVメーカー、アンテナメーカーからアフターマーケットナビが発売され始めた。図1(次頁参照)にカーナビの出荷台数累計を示す。03年3月時点で1,147万台を突破している。
 ドライバーはカーナビを利用することにより、自分のいる場所、目的地までに取るべき経路、次の交差点までの距離やどちらに曲がればよいか、さらには車線情報などを知ることができ、知らない土地での不安感を解消できる。また、万一経路を間違えても、すぐに新しい経路が提供されるため、道に迷って不安全な運転行動を取ることがなくなってきた。
 VICSの普及も重要である。かつては、交通渋滞に直面した際、渋滞の原因や解消の見込みがわからず、「約束に間に合うか」などとイライラしたものである。しかし、VICS受信機を搭載することにより、事前に渋滞情報を知り回避可能なルートを検討したり、目的地到着時間をかなりの精度で予測することが可能となった。また、交通規制情報や事故情報、駐車場情報が提供され、より安全かつ効率的に運転することが可能となった。図2にVICSユニットの出荷台数累計を示す。03年3月時点で、658万台を突破している。
 しかしカーナビの普及と時を同じくして、運転中に地図を見たりカーナビを操作することにより、「脇見」:Visual Distraction が誘発され、事故につながる懸念が指摘されるようになってきた。なお、カーナビはTV受信機能を有するものがほとんどであり、これらの指摘の多くが、カーナビそのものよりも運転中にTVを見ることの危険性を指摘するものであったことは記憶すべきである。

図1●カーナビ出荷台数累計

資料:(社)電子情報技術産業協会(JEITA)データより作成

図2●VICSユニット出荷台数累計

資料:(財)道路交通情報通信システムセンター(VICS)データより作成

自工会ガイドライン策定/改訂の経緯

 カーナビの普及開始時期は、交通死亡事故が1万件を突破し、社会問題化した90年代初めと重なっており、マスコミはもとより運輸省(現 国土交通省)や警察庁でも、当初からカーナビの安全性が着目されてきた。自工会では、90年4月に「画像表示装置安全性WG(現 HMI分科会)」を発足し、専門家による検討を進めてきた。同年11月には、走行中のTVやビデオ映像の表示禁止、走行中の細街路の表示制限、走行中の複雑な操作の禁止などを織り込んだ初版のガイドラインを発行した。
 96年4月に(財)道路交通情報通信システムセンター(VICS)による交通情報提供や「見えるラジオ(FM多重放送)」が運用開始され、それまでのようにCD−ROM等に格納されたコンテンツだけではなく、外から文字情報、画像情報等が入るようになってきた。これに先立つ92年には、VICS推進協議会のなかに発足した「安全分科会」と合同で、VICSから提供される渋滞・規制情報等の動的情報(時々刻々と内容が変化する情報)を安全に扱うための実験を実施し、95年6月に改訂版のガイドラインを発行した。このなかには、走行中の動的文字情報の文字数表示制限等が追加されている。
 FM多重放送に関しては、(社)電波産業会(ARIB)に自工会から働きかけを行い、番組識別番号を規定し、ARIB STD−B3(FM多重放送の運用上の標準規格)に盛り込んだ。これにより、走行中に表示すべき交通情報などと、表示すべきでないニュースなどを車載装置側で識別することが可能となった。また、いわゆる第1世代テレマティクスが97年ころから商品化され始め、センターから画像情報が送られるようになったり、データ格納媒体がDVD−ROMとなり、施設情報として店舗の外観イメージなどの提供も可能となってきた。このような社会情勢の変化に応じて、99年5月にパッケージメディアや情報センターなどからの静止画の取り扱いや、FM多重放送の取り扱いを定めた改訂第2.0版のガイドラインを発行した。
 さらに、運輸省・交通安全公害研究所(現 独立行政法人 交通安全環境研究所)が実施してきた研究成果に基づき、98年12月に運輸省審査課から、ディスプレイの取り付け位置要件に関する検討依頼が自工会に出された。これを受けて自工会では、前方視界の妨げにならず、かつ少ない視線移動で地図等を確認できる要件を、(財)日本自動車研究所(JARI)に委託し研究してきた1)。これを織り込んだガイドラインが、00年2月に発行した改訂2.1版であり、現在に至っている。
 本ガイドラインは言うまでもなく自工会加盟企業の「自主対応」であるが、当初より運輸省自動車交通局技術安全部審査課長と警察庁交通局交通規制課長あてに提示している。また、本ガイドラインは、VICSが技術開示メーカーに示す「VICS対応車載機に関するガイドライン」にそのまま引用されており、アフターマーケットナビを開発しているほとんどのメーカーに公知のものである。

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