着実な販売網強化
●御社の場合も、販売網の強化がやはり最も力を注いでおられる分野になりますか。
スバルの特約店は、富士重工業として資本参加しているところはあるものの、基本的にすべて独立系です。欧州全体で現在14の特約店があり、その傘下に約1,000のディーラーがあります。他社に比べれば数は少ないと思いますが、現在の販売台数から見れば適正と言えるでしょう。
当社としては特約店やディーラーの数を増やすというよりも、販売網の質の向上をめざしています。日本の本社と連携して特約店の方々と話し合いを進めながら、スバルの統一したイメージづくりを推進しています。具体的には、委員会のようなものを作り、カタログの統一、ショールームの規模、ディスプレイや運営の仕方など決定し、その基準に従って各自が投資をしていくという形です。歩みとしては決して早くはないかもしれませんが、着実な進め方を大切にしています。
●他社の多くがセレクティブな販売網作りを選んでいるようですが。
ブロックエグゼンプション改訂後の欧州自由化市場に対応して、スバルの場合もさまざまな議論を踏まえ、最終的にプレミアムブランドにふさわしい当社独自の基準に基づいて販売網を整備開発していくシステムの導入を進めています。
以前から拠点当たり販売台数が少ないとの認識を共有し、特約店のほうで各拠点の選択と集中強化を進めてきました。販売網整備に向けて、今のところはBER改訂に伴う大きな変化は出ておらず、スムーズに移行していると思います。
商品ラインアップが充実
●現在の欧州での販売動向はいかがですか。
欧州全体での販売動向を見ますと99年がピークで年間の総販売台数は1,500万台強に達していましたが、現在は1,450万台前後です。スバル車の欧州における販売台数は、99年には6.2万台だったものが、為替動向の悪化やモデルチェンジを控え、02年には3.8万台と苦戦しました。しかし、今年03年は4.5万台を見込んでおり巻き返しています。日本車全体の欧州での伸びとともに、当社の販売も上向きです。
スバルを含めた日本車が苦境から脱して健闘している大きな要因のひとつは、やはり円高が改善されたこと。もうひとつは、日本車の新モデルが次々と欧州市場に投入され、それぞれ良い手ごたえを得ていることも追い風となっています。
●欧州市場でのスバル車の主力モデルを紹介してください。
欧州で販売しているスバル車の主力は、上のクラスから言いますと今年のフランクフルト国際モーターショーで世界に先駆けて3リッターモデルを披露した新型「レガシィ」、次に来るのが2リッターにターボエンジンを搭載した「インプレッサ」、スポーツユーティリティー車の「フォレスター」(2.0L)、そしてマジャール・スズキでOEM生産されている「G3Xジャスティ」(1.3L)の4モデルと、商品ラインアップが非常に充実しています。
なかでも、ハイウェイでもオフロードでも快適で力強い走りを見せるクロスオーバータイプの「フォレスター」は、欧州市場にジャストフィットし非常に好評です。またハイパフォーマンスの「インプレッサ」も、モデルチェンジを経て、現在安定した売上の伸びを示しています。
●スバルの欧州におけるコア市場はどこですか。
イギリス、ドイツ、スイスが当社の主要な市場で、この3市場の販売台数で欧州全体の約60%を占めます。当社のシェアは欧州全体で0.3〜0.4%というわずかなものですが、スイスやノルウェーでは3%を占めるなど日系他社の市場傾向とは異なるでしょう。
スイスでスバルが強い理由として、山国のこの国では四輪駆動で定評のあるスバル車が愛用されていることも事実ですが、やはりスイスの消費者は高品質のものにはお金を払うことを厭わないという傾向があり、堅実な国民性にスバル車の個性が合致しているということでしょうか。
AWD特化で成功
●四輪駆動に力を入れているのはスイスだけですか。
スイスやドイツはもともと四輪駆動で特化してきたのですが、欧州全市場でもスバルの特色を活かして価格競争に巻き込まれないために、思い切って四輪駆動でやっていこうと決断しました。とりわけ、オランダでは96年に四輪駆動への切り替えを決定し、それが実現したのは特筆すべき快挙です。
ちなみにスバルでは四輪駆動を4WDではなくAWD(All Wheel Drive)とあえて呼んでいます。理由は、4WDはオフロードやジープなど乗用車よりも実用タイプのイメージが強いことから、これと差別化するために、スバルが乗用車用に開発した四輪駆動を意図的にAWDと呼んでいます。
AWDと商品のコンセプトがマッチしたよい例が、「レガシィ」のワゴンタイプです。スイスなど欧州だけでなく北米、豪州等世界各国で「レガシィ」は使い勝手のよさと走行性能、安全性が高く評価されています。
●小型車主流のオランダにAWDを投入したご苦労は。
ご存じのようにオランダ人ユーザーは財布の紐が堅く、平坦な国土ですから四輪駆動など不要、実用的な小型車しか売れないという見方がありました。しかし、現地工場も持たないスバルが価格競争の激烈な小型車市場に参入すれば、不利な戦いになることは自明です。同国の特約店のトップが、スバルの思い切った方針に
対して、「自分の生涯を掛けてAWDに切り替えよう」と勇猛心を持って継続的に取り組んでくれたことが、大きな成功に結びつきました。
私はこの時点では担当をしておりませんでしたが、この特約店が展開した作戦は、AWDの良さをわかってもらうためには乗ってもらうしかないと、試乗会を大々的に展開するというものでした。しかも試乗会では、ビニールシートの上に石鹸水を撒いて滑りやすくするなどさまざまなむずかしい路面を設定して、ベンツやBMWなどの競合車と安全度を比較するという、ユニークな試みをやってくれました。その後同様のイベントが世界各国でも展開されスバルAWDのブランド定着と拡販に大きく貢献しました。
●高級車というカテゴリーだけでは括れないこだわりのある車が主力となっているわけですね。
WRC(世界ラリー選手権)で活躍中の特色のある「インプレッサ」は、値引き競争に巻き込まれにくい商品力を持っています。インプレッサの販売台数の70%から80%がターボ搭載車という市場もあります。ラグジュアリの意味での高級車ではありませんが、高付加価値車であることは間違いありません。
一方、ドイツはWRCに対してやや冷静。ドイツの国民性なんでしょうか、なかなか乗ってこない(笑)。ドイツは300万台を超える欧州内最大の市場ですが、地元の老舗メーカーがひしめき合っているためになかなかハードルが高いといえます。しかし2年前からドイツラリーがWRCとして開催され、ドイツでもターボの比率が30%と向上してきています。
●四輪駆動に特化した戦略は、欧州市場に合わせたものですか。
欧州のみならず北米でも全面的に四輪駆動に絞っており、さらに進化させたシンメトリカル(左右対称)AWD路線は、スバル全体の大きな方向でもあります。スバルの総販売台数は北米では20万台、シェア1%を超えています。欧州では4.5万台ですが、まだまだ伸ばせるとみています。
スバルは世界のマーケットのシェア1%の小さなメーカーです。欧州市場の1%となると14万台。この達成は一朝一夕には達成できるものではありませんが、いずれは欧州も北米並みに持っていきたいですね。
AWDに焦点を絞ったニッチ戦略は、走りにこだわるスバル独自のスタイル、つまりコア技術であるAWD技術を活かしながら、それをとことん極めることが、プレミアムブランドとしてお客様にスバルの存在感をアピールする道だという信念に基づいています。