JAMA 社団法人日本自動車工業会Englishヘルプサイトマップ   
自工会の概要リリース/会見データファイルライブラリー
ホーム > ライブラリー > JAMAGAZINE > 2004年7月号

提言直言

快適で安全な二輪ライフに向けて

松村 みち子[タウンクリエイター代表]

高速道路のタンデム走行

 私事で恐縮だが、筆者は二輪車の後部座席に乗せてもらいたい、という夢が高じて二輪ライダーになった。四輪には乗っていたものの原付には触ったこともなかった。それでもせっかく二輪に乗るなら、高速道路も走れる排気量のものでなければつまらない。そんな思いで自動車教習所の門をくぐり、悪戦苦闘の末にようやく念願の中型二輪免許を取得したのであった。
 もっともタンデム走行のむずかしさは教習所のなかで身をもって知るところとなり、路上に出てからはもっぱらソロツーリング。近ごろ乗るヒマもなくなってしまい、ちょっと残念に思っている。
 さて、警察庁が昨年12月27日から今年1月23日にかけて行った「道路交通法改正試案」のパブリックコメントには、高速道路における二輪車の2人乗り解禁に関する項目が盛り込まれていた。筆者はたまたま別の項目(違法駐車の取り締まりに係る制度改革)の懇談会委員を務めていたこともあり、この集計結果やその後の国会審議の成り行きを興味深く見守っている。
 パブリックコメントに対して寄せられた意見総数は約1万3,000件、うち高速道路における自動二輪車の2人乗り規制の見直しへの回答は1万1,484件で、「全面賛成」は84.3%、「条件付きで賛成」は12.4%という結果だった(警察庁交通企画課)。
 賛成意見の主なものとしては「暴走族対策と組み合わせることで、社会からの二輪車に対する意識改革が期待できる画期的な取り組みだ」「高速道路には交差点、横断歩道、マンホールなどがなく一般道路より安全だ」「諸外国では認められているのに、自動二輪車の4大メーカーを擁する日本で認められていないのはおかしい」「同乗者がいればむしろ運転が慎重になる」が挙げられる。
 また条件付き賛成の意見には、車両の安全性の向上を求めるもの(「排気量制限が必要」「後部座席に背もたれの装備など何らかの条件をつけるべき」)や、ライダー教育の必要性を説くもの(「安全教育や講習の充実」「安全な服装の義務づけ」)などがあった。
 1965年に高速道路における二輪車の2人乗りが禁止されて以来の解禁の動きではあるが、警察庁では道交法改正後も都道府県公安委員会が必要と認めるときは交通を規制できるとしており、首都高や阪神高速などには規制が残りそうだ。

欧州における二輪車の実態


パリ都心部の路上には二輪車専用の駐車スペースが整備されている

 一方、反対(2.3%)の立場から「二輪車の事故が増える」とする声もある。確かにタンデムでは1人のときとは二輪車の重心が変わり、操縦性も異なってくる。しかしロングツーリングでは一般道より高速道路のほうが疲れないのではなかろうか。高速道路では脇道からの飛び出しによる急制動や、信号での発進・停止がないぶん、同乗者にとって体にかかる負担や危険性は少なくなるのだから。
 事故に関しては、(社)日本自動車工業会が2001年2月に発行した『欧州高速道路における二輪車二人乗り実態 調査報告書』が参考になる。
 この報告書によれば、ドイツ(連邦アウトバーン)、イタリア(ロンバルディア州アウトストラーダ)とも高速道路の2人乗りが1人乗りより危険だとは言えない。ドイツでは「二輪車が高速道路を走るリスクは一般道を走るリスクの3分の1」との見解を示している。またイタリアでは二輪車の交通量の統計はないものの、高速道路においては1人乗りより2人乗りのほうが事故発生率は低く、それは2人乗りの運転者が安全運転を心がける傾向があることなどが要因として考えられるとしている。
 筆者は身体障害者用駐車スペースの研究のため01年9月9日から23日まで欧州5ヵ国に出かけ調査した。よく知られているように、欧州の主な国々では持続可能な社会をめざし、自動車利用を抑制することを交通政策の重要課題にしている。オランダはもちろん、イギリスでもフランスでも都心部における駐車規制を強める一方で、自転車道の整備を着々と進めているのが印象的だった。
 フランスでは公共スペースを人や公共交通に優先的に配分する交通政策に基づき、01年9月1日からはパリの東西を貫く通りにタクシーとバスの専用レーンを設け、自転車走行ルートも整備した。パリ都心部の路上には自動車用の駐車スペースは少なく、地下に5〜6階の大規模な駐車場を設置している。代わりに多いのが写真のような二輪車専用の駐車スペースである。このスペースに自転車が置かれていることはなく、オートバイが整然と並んでいるのには感心するばかりであった。

高校生からの二輪ライフ

 快適で安全な二輪ライフには、免許取得可能な年齢の高校生に対する積極的な交通安全教育が求められる。筆者が生まれ育った神奈川県では、「4+1ない運動」(免許を取らない、車を持たない、車を運転しない、車に乗せてもらわない、親は子どもの要求に負けない)を発展的に解消し、90年から高校生が主体的に交通安全について考え行動する「かながわ新運動」を展開している。
 全国的に見ても、昨今は路線バスの縮小などにより、二輪車での通学を許可する高校が増えてきている。文部省では94年に各都道府県に1校ずつの「二輪車研究指定校」の制度を始めた。生徒たちは2年間の取り組みのなかで実技や安全マインドなどを学ぶ。
 指定校ではどんなことをやっているのか視察させてもらった。
 警察やバイクショップの協力を得て、登下校時の安全指導を行ったり、ツーリングクラブの協力で徹底した違反者指導をしているほか、地元の自動車学校で交通クラスマッチを開いたり、二輪車安全運転全国大会に出場したりという内容だった。
 家庭・学校・地域が連携してこのような実践的教育を積み重ねることで、交通社会人としての責任感と自覚が育まれ、豊かな二輪ライフにとつながってほしいものである。

(まつむら みちこ)

──────

← 前へ 8/16 次へ →

Copyright (C) Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.