JAMA 社団法人日本自動車工業会Englishヘルプサイトマップ   
自工会の概要リリース/会見データファイルライブラリー
ホーム > ライブラリー > JAMAGAZINE > 2005年11月号

3.企業間競争の行方

 二輪車市場における各社のシェアは表2の通りである。スクーター市場では、ホンダM&Sが35%の最大のシェアを占め、地場のバジャージとTVSがその後に続く。モーターサイクル市場では、ヒーロー・ホンダが約50%を占め、バジャージとTVSがその後に続く。スクーター市場では75cc〜125cc未満のセグメントが売上全体の約60%、モーターサイクル市場でも同セグメントが売上全体の約88%を占めていることから、このセグメントにおけるシェアがそれぞれの市場のシェアに反映されている。
 図3、図4は、スクーターとモーターサイクル市場のシェアの推移である。産業ライセンス制度の撤廃や外国企業の100%出資が解禁になるとともに、両市場でホンダM&S、ヒーロー・ホンダのシェアがそれぞれ伸び続け、逆にバジャージを中心とした地場企業のシェアが低下ないし停滞している様子が伺える。特にスクーター市場はバジャージ中心の寡占市場であった。しかし、品質やデザインなどに厳しくなった消費者が、モーターサイクル市場を鑑みて、変化が見られないバジャージのスクーターに魅力を感じなくなった。また、バジャージのスクーターはギア付きであったが、ホンダM&Sのそれはギアなしで、(女性が横乗りできるような)サリーステップを付けるなど消費者のニーズに合わせた仕様であったことが、スクーター市場でもさらにシェアを奪われる原因となった。
 今後の見通しとして、スクーター、モーターサイクル市場で、ホンダ系(ヒーロー・ホンダ、ホンダM&S)のシェアは伸び続けそうである。これまでヒーロー・ホンダ、ホンダM&Sでは、各市場への相互乗り入れを見合わせてきた。しかし、それぞれ新しい工場を設立して、ホンダM&Sは昨年秋からモーターサイクルの販売を開始し、ヒーロー・ホンダも今秋からスクーターの販売を開始する。また、TVSとの資本提携を解消したスズキもスズキ・モーター・インディア社を設立し、この秋からモーターサイクルの販売を開始する。こうして、日系企業 対 地場企業という図式が鮮明になり、競争がさらに熾烈になっていくことが予想される。地場企業の対応はどうであろうか。バジャージは95年以降、社内のリストラを進めながらモーターサイクルへ生産をシフトし、川崎重工との関係を強化して新しいモデルを発表するなどイメージアップを図っている。TVSはニッチ市場を狙い、若い女性をターゲットにおしゃれなスターレットを販売する予定である。その他、カイネティック・エンジニアリング社やLMLも韓国企業と技術提携を結ぶなど、各社はデザインや性能、燃料効率の異なるモデルを投入して対抗している。ただし、低価格競争がこのまま続けば、収益性の観点から淘汰される地場企業が出てくるかもしれない4)

図3●スクーター国内販売シェア

グラフ
注)*04-05年度は4〜7月まで。 
(出典) Society of Indian Automobile Manufacturers, "Flash Report on Production and Sales(各年版)" 及び各社のホームページより

図4●モーターサイクル国内販売シェア

グラフ
注)*04-05年度は4〜7月まで。 
(出典) Society of Indian Automobile Manufacturers, "Flash Report on Production and Sales(各年版)" 及び各社のホームページより

4.今後の展望

 日系企業でのインタビューの際に、中国との比較でよく引き合いに出されたのは、地場ベンダーの技術力と品質の高さである。部品の国産化を進めてきた政府の政策の甲斐もあってか5)、今日、日系企業の現地調達率は100%に近い。このような背景からも、インド二輪車産業は、国際競争で優位を獲得するための4つの条件6)―(1)資源やスキルといった生産要素条件、(2)消費者の高い要求水準、(3)関連産業の存在、(4)企業の競合関係、を兼ね備えていることになり、大きな国内市場の潜在性ばかりでなく、企業の国際展開にも大きな期待が持てる。現に日系企業は、インドを輸出拠点としても位置づけている。ここでは、国内市場の展望と地場企業の海外市場での展望を検討して結びとしたい。

4−(1) 国内市場
 85年度から家計の市場情報調査を実施している国立応用経済研究所(NCAER)によると、彼らが中間層と定義する年間所得20万〜100万ルピーの家計は95年度の約435万家計から、01年度には約1,000万家計に増大した。彼らの推計によると、09年度には約3,000万家計に達する見通しである。このような中間層の増大に伴い、モーターサイクルを保有する家計は01年度の全家計の7%から09年度には28%へ増大し、需要は850万台を超えるのではないかと見られている。他方、スクーターの保有比率は01年度の8%水準とほぼ変わらず推移していくと見られている。
 このように中間層が拡大し続ければ前述の100cc前後のモーターサイクルの需要も伸び続けるだろう。だが、このセグメントにおける低価格競争は、販売メーカーにとって利幅が小さい。そのため、各社は125cc以上のセグメントへ新たな需要を誘導するために、モデルを先行投入する計画を打ち出している。また、デリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカッタの4大都市を結ぶ高速道路や東−西、南−北を結ぶ高速道路の整備が計画通り完了すれば、長距離移動に適した、そのような大きなパワーを持ったモーターサイクルの需要は拡大するだろう。

4−(2) 海外市場
 二輪車の2004年度輸出額は約2億4,000万ドルである。主要な輸出先は、スリランカやバングラデシュ、ネパールという自由貿易協定を結んでいる南アジア諸国や中南米諸国である。また、今後の輸出先として注目されるのはパキスタンである。表3は、パキスタンのモーターサイクル生産・販売台数である。04年度の販売台数は約40万台弱であるが、前年度比41%増で、今後も成長が予想される。印パ関係が改善に向かっているため、他の南アジア諸国同様に貿易がより自由化されれば、インド地場企業にとっては魅力的な市場となることは間違いない。バジャージとTVSはすでに進出の準備を始めている。表3のように、パキスタンのモーターサイクル市場には、すでにホンダ、ヤマハ、スズキの日系企業が参入しているが、バジャージ、TVS、LML、カイネティックといったインド地場企業の品質は、国内市場での競争の賜物として、それら在パキスタン日系企業の製品に匹敵するばかりか、為替レートを考慮してもそれら企業よりも低価格で販売できるため販路の拡大が期待できる。

表3●パキスタンにおけるモーターサイクルの生産・販売台数

(注)
4)日本経済新聞社(2004年10月12日、2005年9月7日)、地元紙Business Standard、Economic Timesを参照した。
5)詳細は二階堂(2003)「グローバリゼーション下の中国の台頭とインド自動車・二輪産業」(大原盛樹編『中国の台頭とアジア諸国の機械関連産業−新たなビジネスチャンスと分業再編への対応−』アジア経済研究所)を参照されたい。
6)Porter, M.E.(1999) "The Competitive Advantage of Nations", Macmillan.

(にかいどう ゆうこ)

──────

← 前へ 6/10 次へ →

Copyright (C) Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.