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3.日本の自動車メーカーの生産台数推移

 図3、4に日本の自動車メーカーの96〜05年の国内及び海外における生産台数の推移を示す。これにより以下のことが言える3)

  1. 国内生産台数は、90年代初頭のころが最大で、その後海外生産の増加により、一時減少した。最近数年は、1,000万台を維持し、微増している。
  2. 海外生産は、増加の一途である。地域別では、北米が第1位、続いてアジア、欧州などの順である。最近では、アジア地域での増加が目立ち、北米に迫っている。
  3. 最近、急増している海外生産の量が国内生産に近づき、05年では肩を並べるほどとなった。国内生産量を抜くのは間もないと思われる。
  4. 日本の自動車メーカーの全世界における生産量は02年から急増しており、04年からは2,000万台を超えた。

 このように、日本の自動車メーカーはグローバル規模で急成長を遂げている。そのため、使用する部品の供給も世界どの地域でも共通なものを望んでおり、プラスチックメーカーもそれに対応する体制の構築を図っている。

図3●日本の自動車メーカー国内生産台数推移
図
(出典)(社)日本自動車工業会資料

図4●日本の自動車メーカーの地域別海外生産台数推移
図
(出典)(社)日本自動車工業会資料

4.日本のプラスチックの生産動向

 図5に日本における各種プラスチックの96〜05年の国内生産量(個別)推移を示す5)。これらの図より以下のことが言える。

  1. 汎用樹脂では、最近のPPの好調さが目立つ。
  2. エンプラは増加基調である。
  3. 一方、PVC及び熱硬化性樹脂は長期的に見て低落傾向にある。
  4. その他の樹脂は横ばいと言えよう。

 自動車に多く使用されているPPとエンプラがこの期間比較的順調に推移していたことがわかる。

図5●日本の各種プラスチックの生産量推移
図
(資料)経済産業省、化学工業統計2002年までは珪素樹脂を含んだ値

5.自動車に使用されるプラスチックの特徴及び代表的な用途例と最近のトピックス

  1. PP(ポリプロピレン)
     PPは、成形性が良好で種々の成形法が適用できる。「汎用樹脂中最も軽い(比重:約0.9)」「汎用樹脂中最も耐熱性が高い」「酸、アルカリ、有機溶剤等の薬品に対して安定である」「フィラー、ガラス繊維などの添加により物性向上が可能である6)」「他のポリオレフィン系樹脂とともにリサイクルが可能である」などの特長を生かして、自動車に最も多く使用されているプラスチックである。その用途範囲はバンパ、ドアトリム等の外装・外板部品、インストルメントパネル等の内装部品、各種電装部品からエンジン周りまで非常に幅広い。
     トピックスとしては、コストパフォーマンスの優れた耐衝撃性向上グレードである重合型高ゴム含量PPが開発され、各種用途に使用されている。また、超高剛性グレードであるガラス長繊維強化PPが開発され、フロントエンドやドアモジュールなどの構造部材に使用され始めている。その他、自動車メーカーからのコスト低減ニーズに合わせ、強化材やエラストマー等のコンパウンドをPP製造プラントの造粒押出機で行いコスト削減を図ること等も行われている4)

  2. PE(ポリエチレン)
     自動車に使用されるPEは、主にエアダクト、フェンダー、燃料タンク、クッション材などに使用されている。これらは主にPEの軽量性、低コスト、耐低温特性等を生かしたものである7)
     最近のトピックスは燃料タンクの採用の増加である。従来の金属製タンクと比べて形状の自由度が大きく、近年ますます複雑で空間が少なくなったエンジンルームの空隙を利用することができることも大きな利点となっている。アメリカなどが、クルマ全体から蒸散する燃料の規制をしているため、ポリエチレンとEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)やポリアミド等のバリア性樹脂との積層構造のタンクが多く使用されている。

  3. ABS樹脂
     ABS樹脂はその優れた物性バランス、発色性(高外観)、寸法安定性、成形加工性8)などを生かして、インストルメントパネルなどの内装部品、フロントグリルなどの外装・外板部品などを中心に使用されている。この材料はリサイクル性の問題でかなりの部品がPPに代替されたが、最近2〜3年は、ABS樹脂の外観、寸法安定性、接着性に優れた特徴から高級車種でPPからの回帰が起こり、需要が伸びている。そのような流れのなか、四輪車向けに塗装工程を省略できる無塗装外観が追求されている。車両内装用途で、加飾性を上げるため、高級車種のメッキ部品の製作を可能とするABSメッキグレードの出荷量が増大している9)

  4. PVC(ポリ塩化ビニル)
     環境問題で最近自動車分野での使用量は減少しているが、その優れた柔軟性、触感、低コストであること等、自動車用途には欠かせない材料である。今後も使用されていくことは間違いなかろう。

  5. PA(ポリアミド、ナイロン)
     その優れた、耐熱性、耐薬品性、機械特性、成形性等を生かして自動車に最も多く使用されているエンプラである。使用部位は内装部品、エンジン周り部品等が中心である。
     最近の話題には日本での吸気マニホールドの本格採用がある。材料メーカーとユーザーとの協力のもと、振動溶着法、射出溶着法(DSI[ダイ・スライド・インジェクション]、DRI[ダイ・ローテーション・インジェクション])、溶融中子法等の加工技術が開発され、主にPA6‐GFグレードが採用され、実用化されている10)
     燃料配管積層チューブ用途にPA系材料のシステムが開発された。今後の動向が注目される10)
     また、最近モジュール化の検討が盛んであるが、これを可能にする樹脂のひとつとしてPAが注目され、GF強化やフィラー充填、他樹脂とのアロイ化等、コンパウンド材料の開発が盛んである。

  6. POM(ポリアセタール)
     POMは短期・長期にわたり優れた機械特性を示し、摩擦摩耗特性、耐薬品性などの物性バランスが良く、成形性にも優れたエンプラである11)。最近自動車分野で伸びの大きな材料である。ハンドル類などの内装部品、ワイパー部品などの外装部品、アクセルペダルなどのシャーシ周りなど多くの個所に使用されている。
     近年資源保護の観点からアルコールやガソホール(ガソリンとアルコールの混合物)を燃料として使用する動きが世界的に広まっている。
     POMは耐ガソホール性が良好で、燃料系部品への採用の増加が期待されている。

  7. PBT(ポリブチレンテレフタレート)
     PBTは、電気特性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、摩擦摩耗特性のバランスが非常に優れていることを生かして、自動車部品全般にシェアを伸ばしている。エアアウトレットなどの内装部品、アウタードアハンドルなどの外装部品、各種電装部品に多く使用されている。
     近年、自動車の安全技術の進歩により電装部品、センサ、ハーネス等の部品とこれらを統合制御するためのECUの増加及び快適設備のために電気・電子部品の搭載量が増加しており、PBTの使用量が増加している12)

  8. PC(ポリカーボネート)
     PCは、透明性、耐衝撃性などの機械特性、寸法安定性、低高温特性等に優れたエンプラであり、ヘッドランプレンズ、メーターカバー、ドアハンドルなどに使用され、その数量も増加してきた。
     今後のテーマとして挙げられるのが、大きな軽量化が期待される窓ガラスである。CFI(Coated Film Insert Injection Process)を用いた三角窓やサンルーフなどには採用例がある。
     PCは表面硬度が不十分なことと、長期屋外使用を考慮した耐候性の改良をPCメーカーは鋭意検討中である。その成果の結果、窓ガラス用途へ本格採用がされるか否かが今後の注目材料である。

  9. その他の材料
     PPS(ポリフェニレンサルファイド)が自動車分野で大きく伸びている。その耐熱性を生かしたエンジン周り部品が中心である。m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)は、世界最大手メーカーのGEがスポイラー用ブローグレード、自動車用電線被覆用柔軟グレードなどを開発し市場開発を開始しており、今後の動向が注目される13)
     ポリウレタン、フェノール樹脂等もその特性を活かして今後とも自動車分野では不可欠な材料となっていくと思われる。

  10. 最近のトピックス
     東レがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から受託し、03年度から日産自動車と共同で推進している国家プロジェクト「自動車軽量化炭素繊維強化複合材料の研究開発」について以下に簡単に紹介したい。
     炭素繊維と組み合わせる樹脂の加工特性を飛躍的に向上させ、成形時間を10分以下(従来の約15分の1)と大幅に短縮でき、CFRP適用自動車の量産化に大きく前進した。CFRPは金属材料で最高強度を持つ高張力鋼に比べても軽量かつ強度に優れるため、安全性と軽量性の両立を求められている次世代自動車材料の本命として注目されている。しかし、量産技術の確立と低コスト化が事業化への最大の課題と言われてきた。この両方の課題解決に極めて有効である“CFRP成形時間の短縮”に目途がついたことから、今後、CFRPの自動車車体への本格実用化を一気に加速する14)
     この技術は自動車の軽量化をさらに加速すると思われ、今後の動向が注目されよう。

6.自動車用樹脂材料の供給体制など

 前述したように日本の自動車メーカーのグローバル化が進み、海外における生産台数は、国内を上回るような勢いとなっている。また、部品メーカーの海外展開も進んでいる。ユーザーである自動車メーカーは、世界のどの地域でも共通な部品・材料の供給を望んでおり、材料メーカーもそれに沿った供給体制をグローバルに構築するべく事業を展開中である。それに伴い、グローバルな技術サービス体制の構築も進行中である。
 また、材料メーカーとしては、技術発信の本体である国内自動車メーカーの日本における開発拠点と密接な連携を行うことは当然ながら非常に重要なことである。

最後に

 自動車用樹脂材料は、重量的にはいまだ車体全体の10%前後であるが、燃費節減に果たしてきた役割は非常に大きなものがある。
 その使用量は今後増えることはあっても減少することは考えられないと思われる。
 樹脂にとって自動車分野は非常に重要な顧客先であり、今後もこのような流れに乗って技術開発を進めていく必要がある。

(参考文献)
1)安田武夫、「プラスチック活用事典」p.872、産業調査会、
  2001年10月20日発行
2)安田武夫、「エンジニアリングプラスチック活用ガイド」p.16、日刊工業新聞(株) 1991年4月30日発行
3)(社)日本自動車工業会資料
4)舘和久:プラスチックス、57(1)、31(2005)
5)経済産業省 化学工業統計
6)末広啓吾、「これからの自動車材料・技術−プラスチック材料編−」p.109、(株)大成社 1998年5月20日発行
7)岩政健治、ibid、p.99
8)青木寛充、小倉清、ibid、p.117
9)小原道男:プラスチックス、57(1)、47(2005)
10)中村孝司:ibid、57(1)、57(2005)
11)加来祐二、「これからの自動車材料・技術−プラスチック材料編−」p.158、(株)大成社 1998年5月20日発行
12)花房和人:プラスチックス、57(1)、68(2005)
13)日本ジーイープラスチックス資料
14)東レ(株)ニュースリリース (2005年4月22日付)

(やすだ たけお)

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