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特集 自動車素材−材料の進化と課題

リサイクル視点から見た自動車用材料のさまざまな可能性と課題

高橋 淳[東京大学大学院工学系研究科 助教授]

はじめに

 ゴミの最終処分場の逼迫からリサイクル問題が注目され、ここ10年で、包装容器、家電、建設、自動車とリサイクル法が制定されてきた。例えば自動車においては、確かに日本国内で廃棄される自動車は重量にして年間500万トンを超えており、その90%をリサイクルしてもまだ50万トン分の管理型処分場が毎年必要となり、自動車リサイクル法制定の背景となっている。
 このようななか、資源の有効利用の観点から材料のリサイクル性を高める検討や、LCAの観点から省エネルギー(以下省エネと略記)性の高いリサイクルシナリオを考えるなど、学問的・技術的な進捗もめまぐるしい。また、独立行政法人物質・材料研究機構で行われている超鉄鋼研究では、わが国において人工物から発生する鉄スクラップと鉄鋼の内需が2030年には約5,000万トンでバランスすることからも、リサイクル可能な鉄鋼の開発は資源の自給自足を可能とする重要技術であるとして、技術開発と実用時期の目標を設定している。
 以下本稿では、省エネ・省資源の観点から、まず基礎素材のリサイクルの必要性をマクロとミクロの面から説明したい。また、輸送機器の軽量化や対人対物安全性の向上を目的に開発されている樹脂系複合材料を例に取って、軽量化とリサイクル性の両立により大きな省エネ効果が得られることを具体的に示すとともに、この種の技術の早期開発と途上国への早期導入の重要性を明らかにする。

1.マクロな省エネに役立つリサイクル

 図1は1人当たりの一次エネルギー供給量並びに部門別最終エネルギー消費量を示したものであり、図2は世界、OECD、非OECD、並びに主要国の人口の推移と予測である。すなわち、2000年には60億人が一人平均1toe(石油換算トン)のエネルギーを消費していたものが、無対策の場合、2050年までには90億人が一人平均3toeを消費するようになる可能性がある。これは世界中で現在の4.5倍の年間エネルギーが必要となることを意味しており、数%や数十%ではなく、数倍の効率改善が必要であることがわかる。
 また図1からは、非OECD諸国の運輸部門の割合が小さいこともわかるが、図3に示される日本の例を見てもわかるように、ライフスタイルと直接関係する運輸(旅客)部門と民生(家庭)部門のエネルギー消費量は産業部門等の省エネ努力とは別次元で今後伸びてくるものであり、技術でカバーする必要性の高い部門である。
 さらに図4はエネルギー源別に見た世界での部門別消費割合であり、運輸部門はほとんど石油のみに依存していることがわかる。また、図5は日本の例ではあるが、運輸部門でのエネルギー消費のほとんどが自家用乗用車とトラックによることがわかる。すなわち、非OECD諸国のモータリゼーションにより石油はまず間違いなく供給不足になり、天然ガスも将来的には同様であって、自動車の燃費向上が緊急の課題であることが理解できよう。
 さて一方、図4における産業部門の消費エネルギーを見ると、このうち石炭は鉄鋼を作るためのコークス、石油はプラスチックスの原料と燃料であり、基礎素材の製造に多くの化石資源が使われている。つまり、仮に再生可能エネルギーにより電気や水素といった二次エネルギーが豊富に作られるようになって運輸部門や民生部門での化石エネルギー使用量を大幅に減らすことができても、この基礎素材の製造部分の化石資源の使用量は減らすことができず、別の技術開発が必要であることがわかる。
 この問題の解決方法としてはふたつの大きな方向性がある。すなわちひとつは、再生可能資源を基礎素材として活用するものであり、例えばポリ乳酸あるいはフィラー添加でその耐熱性や脆性を改善した複合材料などが注目されており、コストや性能面で既存の基礎素材を代替するにはまだ多くのブレークスルーが必要ではあるが、量的には代替可能なポテンシャルが確認されている。もうひとつは、廃棄される人工物から金属やプラスチックスを回収して原料もしくは燃料とするいわゆるリサイクルである。金属は金属酸化物をコークスなどで還元して作るよりも、人工物として表面だけが酸化したものから製造するほうがエネルギーがかからないことは明らかであり、プラスチックスについても同様のことが言える。

図1●1人当たりの一次エネルギー供給量並びに部門別最終エネルギー消費量
図
注)IEA統計等をもとに著者ら作成

図2●世界人口の推移と予測
図
注)国連人口推計より

図3●日本の部門別最終エネルギー消費量の推移
図
注)1973年を1とした場合の比で表示

図4●エネルギー源別に見た世界の部門別消費割合
図
注)IEA統計等をもとに著者ら作成

図5●日本の運輸部門での機関別エネルギー消費量の推移
図

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