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特集 エコドライブの奨め
ファミリーカー燃費向上のためのエコドライブ術
菰田 潔[モータージャーナリスト]
はじめに
ボクの職業はモータージャーナリスト。いろいろなクルマに乗って、その解説や試乗記を雑誌に書くのが仕事だ。いち早く新車に乗るために、日本のメーカーだけでなく外国のメーカーの試乗会にも出かけるので、毎年8〜10回程度海外出張している。そんな経験から日本では想像できない、おもしろい話を聞くことがある。
そのひとつがドイツ人の歯磨きの仕方だ。あなたは歯磨きするときに、一体どれくらい水を使うか想像したことがあるだろうか。ジャーッと水道を出してブクブクペーと口を濯いで終わるまでに、コップ何杯分もの水を使うはずだ。しかし多くのドイツ人はたったコップ一杯の水で歯磨きが完結するというのである。コップ一杯水を貯めて、ブラッシングが終わったらその水で何回か口を濯ぎ、コップに残った水で歯ブラシを洗って終了だ。幼稚園に入る前に親から教わっているドイツ人は、これを難なくこなす。実際にやってみると一応できるのだが、どうも昔から贅沢に水を使い慣れている日本人には、苦しい作業に感じられるのではないだろうか。
洗面に関してはもっと差がある。洗面器に貯めた少しの水で顔を洗うのだ。石鹸をつけて顔を洗い、その水で濯いで終わる。その水の量はザバザバ使う日本人には、こんな少しでどうやって顔を洗うのか想像もできない。
またドイツで一般的なレストランに行くと、よくお皿があまりきれいでないように見えることがある。それはお皿の洗い方に違いがあるからだ。洗剤を薄めた水でお皿を洗い、そのまま並べて自然乾燥させたから、水の垂れた跡が残って見えているのだ。しかしドイツ人はこれを自然に受け入れている。ここで注意しなければいけないのは日本とドイツの洗剤の違いだ。口に入れても大丈夫な植物性の洗剤だから、お皿に残っていてもまったく問題ないからだ。洗った後はよく濯いでくださいと書いてある日本の洗剤で、これをやってはいけない。
なぜこんな話をしたかというと、自分では充分やっているつもりでも、もっと上があること。これまでの常識を覆すことは、たくさんあることを知ってもらいたかったからだ。
そんなことをベースにして、21世紀はどんな生活をめざせば良いのだろうか。その中でどんなドライビングをすれば良いのだろうかを考えなくてはならないと思う。
そこでボクの提案は、エコロジー(環境性)、エコノミー(経済性)、セーフティ(安全性)の3つを満足させる生活、そしてドライビングをめざすことだ。
日本人はとかくひとつの方向に向かうと、大局的にものを見ることができなくなるのか、考え方が偏ってしまう傾向があるように思う。エコロジーをめざすのは良いことだが、そこにはエコノミーもセーフティもあることを忘れてはいけない。燃費が良くなり、排出ガスもきれいになったクルマが登場するたびに、エコロジーのためだと買い換えていたら、毎年1台ずつ買わなくてはならないだろう。これではエコノミーが成り立たない。エコロジーとエコノミーが両立するからといって事故になるような運転をしたら、それは本末転倒というものだ。
ここからはエコロジー、エコノミー、セーフティの3つとも満足させながらも、特にエコロジーを意識したドライビングの方法を紹介しようと思う。
1.実践的エコドライブ
●2週間に一度はタイヤの空気圧チェック
タイヤはゴムでできている。空気の分子はゴムの分子より小さいので、隙間から抜けて漏れてしまうのだ。技術が進歩しても空気が漏れないゴムはまだない。そこでタイヤの空気圧のチェックが必要になるのだ。
タイヤの空気圧が減ると何がいけないのか。まずタイヤの変形が大きくなり、転がり抵抗が増えて燃費が悪くなり、ゴムが擦れて減りが早くなる。ブレーキの利きが悪くなる。カーブで安定性が悪くなる。揺れが大きくなり乗り心地が悪くなる。ハイドロプレーン現象が起きやすくなる。ハンドルの応答遅れが出る。というように空気圧が減って良いことはひとつもないのだ。
2週間に一回チェックというのは頻繁に感じるだろう。しかしこれには2つの意味がある。ひとつは季節の要因だ。夏から秋、秋から冬にかけては気温が下がっていくから、タイヤの空気温度も下がって空気圧が下がるのだ。気温が10℃下がると空気圧は0.1kgf/cm²ほど下がる。だから気温が下がっていく時期はこまめにチェックする必要がある。
もうひとつはパンクを見つけることだ。パンクの80%はスローパンクチャーだと言われている。釘などが刺さったまま走っていて、少しずつ空気が漏れていく。ある程度まで減ると釘が抜けて一気に空気圧が下がる。このときに普通のドライバーは初めてパンクしたことを知るのである。しかし2週間に1度チェックしたときに一輪だけ空気圧が余計に減っていれば、パンクを疑ったほうがいい。
それには空気圧ゲージの信頼性が問題になる。燃料を入れるときサービスステーションでただで見てくれるところは多いが、自分でもペンシル型の空気圧ゲージを持っているといい。丸いメーターのものより長年使っても計測値が狂わないからだ。いまはラジアルタイヤになっているので、空気圧は外見からではわからなくなっているから、ゲージを使って測らなければならないのだ。
●余分な荷物を載せない
トランクに余分な荷物を載せて走っている人は多いようだ。ゴルフに行くわけでもないのにゴルフバッグが載っていたり、大量に買い込んだドリンクなどがそのまま積まれていたりする。まるでトランクが倉庫代わりになっている状態だ。
クルマが動くとき、重量が増えればそれだけ大きなエネルギーを必要とする。つまり燃料をたくさん喰うということだ。トランクや車内の余計な荷物は降ろして、少しでも軽くするだけでエコドライブになる。
●暖機運転をしてはいけない
ボクが運転免許を取った1960年代のクルマにはチョークボタンというのがあって、冷えているときにはこれを引っ張ってからエンジンを掛けた。そしてエンジンが暖まってチョークボタンが全部戻せる状態になってからでないと、発進することができなかった。
しかし技術は進歩していまはコンピュータがエンジンの制御をしている。外気温度、エンジン温度、アクセルペダルの踏み具合などそのときの条件に合わせて、最適な燃料噴射と点火タイミングをコンピュータがコントロールしているから、いまは止まったままの暖機運転は必要ない。
もっと正確にいうと止まったまま暖機運転するとエンジンには良くないから、“してはいけない”。その理由は、止まったまま暖機運転するよりエンジンを掛けてすぐに走り出したほうが、エンジンが暖まるのが早いからだ。エンジンは最適運転温度のときが一番長持ちする。止まったままの暖機運転は最適運転温度でない状態が長くなるからいけないのである。
もちろん水温計の針が真ん中を指すまではアクセルペダルを床まで踏み込んだり、タコメーターのレッドゾーンまで引っ張ったりという運転はしてはいけない。しかし最近のエンジンは力があるから、エンジンが暖まっていなくても普通に走るには不都合はない。
この話をすると雪国の人たちは、真冬は窓が凍るから、暖機してデフロスターで解かしてからでないと走れないと主張する。しかし窓が凍るから暖機運転をしても良いという理由にはならない。窓が凍るのがわかっているなら、事前に古毛布を掛けておくとか屋根を作るなどの対策をして、止まったまま暖機運転しなくても済む方法を考えて欲しいのだ。
●燃費を良くする運転の考え方
エンジンの回転をなるべく少なくするような運転が燃費向上にメリットがある。回転数が少ないということは爆発回数が少ないということで、燃料噴射の回数が少ないから燃費が良くなるのである。
A地点からB地点まで移動するとして、その区間をなるべく高いギヤで走るほうがエンジンの回転数が少なくなり燃費には良い。だから使える範囲内でなるべく高いギヤを使う。
●加速するときのアクセルのコツ
エンジンの回転が高くならないうちに次のギヤにシフトアップするということ。ガソリンエンジンの乗用車だったら2500rpmをリミットしてシフトアップするといい。これが早めのシフトアップの具体的な数字である。
燃費を良くするためにはアクセルペダルを深く踏んではいけないと言われているが、時と場合によっては許されるケースもある。それはこの2500rpmを超えない範囲なら、アクセルペダルを深く踏み込んでいいのだ。
ただし1速や2速の場合にはアクセルペダルを深く踏み込むとすぐに回転が上がって2500rpmをオーバーしてしまうから、ジワッとソフトに踏んで発進・加速する必要がある。しかし2500rpmを簡単に超えそうもない高いギヤになったら2500rpmまではアクセルペダルを深く踏み込んでいい。逆に深く踏み込んで積極的に加速したほうが、燃費は良くなる。
それは早い時点でスピードが上がれば、A地点からB地点までの移動のなかで、より高いギヤで走れる距離を長くできるからだ。これがこの前で述べたエンジンの燃料噴射回数を減らすという考え方に当てはまる。
日本では馴染みが薄い考え方だが、ヨーロッパでのエコドライブはこの考え方で教えている。
その理由は爆発回数の減少と同時にもうひとつある。それはポンピングロスを小さくすることだ。ピストンが下がって吸気するときに吸気管の中のスロットルバタフライが全部開いていれば抵抗は小さいが、閉じていたり少ししか開いていない状態だと抵抗が増える。これがポンピングロスである。つまりアクセルペダルを深く踏み込んだときのほうがポンピングロスは小さくなるのである。
●ATとMTの違い
オートマチックトランスミッション(AT)とマニュアルトランスミッション(MT)では加速のときのアクセルペダルの踏み加減が異なる。
MTの場合には2500rpmを目標にアクセルペダルを踏めるなら深く踏み込んで加速していけばいい。そして2500rpmを超えないように次々とシフトアップしていくのだ。
しかしATの場合にはポンピングロスをなくそうとアクセルペダルを深く踏み込むと、キックダウンしてまた低いギヤに戻ってしまうからむずかしい。だからタコメーターをチェックしながら加速していき、2500rpmになったらアクセルペダルをヒョイと戻してATをだますようにシフトアップさせ、キックダウンしない程度に再びアクセルペダルを踏み込んでいくようにする。これだけでも燃費は良くなる。
最近のATはマニュアルモードが付いたものもあるから、それを使って手動でギヤチェンジするとMTと同じように走れる。ただマニュアルモードでもレンジ切り替え(表示された数字より上のギヤにはいかない)と同じ効果しかないものもあり、その場合にはキックダウンしてしまうからできない。
●一定速運転
加速が終わって一定速走行ができる状態になったときは一番高いギヤになっているはずだ。なっていなければ使える範囲内で一番高いギヤに切り替える。使える範囲内というのは、コンコン、ガラガラ音がしたり、ガクガクというショックが来ていない状態での高いギヤだ。
さて一般ドライバーはもとよりプロドライバーでもむずかしいのが完全な一定速走行だ。エコドライブにとってスピードが上がったり下がったりする波状運転は敵だ。5km/hとか10km/hという上下幅は問題外で、スピードメーターの針1本分も動かない一定速走行が望ましい。
これをやるためにはアクセルペダルの微妙なコントロールが必要だ。アクセルペダルが強中弱の3段階しかないドライバーではできない。アクセルペダルは1000段階くらいのつもりで0.1ミリ動かすにも気を使ってもらいたい。
●高速道路でのスピード
高速道路ではスピードを上げ気味になってしまうが、燃費がいいのは100km/hより80km/hだ。大型トラックをどんどん追い抜くスピードではなく、大型トラックに抜かれない程度のスピードがいい燃費が記録できるだろう。
スピードが上がるほどに空気抵抗は大きくなるから、高いスピードは空気を押し退けるために燃料を使っていることになるからだ。
●車間距離
正確な一定速走行をするためには車間距離が重要だ。車間距離が短いと先行車のスピードの変化の影響を受けてしまうからだ。
では一体どれくらいの車間距離がいいのだろう。日本では100km/hのときには100mと教えられているが、アメリカ、イギリス、ドイツでは車間距離は2秒間と教わる。
前のクルマが橋桁や道路の補修跡などを通過したときに、「ゼロ、イチ、ニ」とゆっくり数える。「ニ」と言うまえに自分がその場所に到達してしまうと車間距離は短い。どんなに急いでいるときにも2秒間以上開けておくと、安全性が高まるだけでなく、一定速走行ができエコドライブにつながる。
●アクセルは早めに戻す
エンジンはコンピュータが制御しているから便利なことがたくさんある。そのひとつがアクセルペダルを戻したときの燃料カットだ。エンジンブレーキ状態で、ボディの走る惰性でエンジンが回されているときには燃料は必要ないから、アイドリング回転数に近づくまで噴射はしていない。
これはエコドライブとしてはメチャクチャ儲かっている状態だ。走行距離は延びているのに燃料は1滴も使っていないからだ。
行く先の信号が赤だったり、一時停止が見えたり、スピードダウンすることがわかったら、なるべく早くアクセルペダルを全部戻すことで簡単に燃費向上させることができる。
●エアコンの設定温度
最近のクルマにはエアコンが標準装備になっている。夏は涼しく冬は暖かくいい環境で走ることができる。しかしエアコンの設定温度によってはエコドライブに影響が出る場合がある。
エアコンのコンプレッサーはエンジンに回されているから、夏の暑いときにガンガンに冷やして走ると、エンジンの力を使うことになり燃費が悪くなるのだ。
とは言ってもドライバーが快適に走れる範囲内で上げればいい。汗をかいたり、ムシムシして気分が悪い状態で走ることは安全上の問題があるからだ。
●信号待ちでアイドリングストップしない
爆発回数を少なくし、燃料噴射の回数を少なくするという意味では、信号待ちで止まっているときは無駄だからアイドリングストップが効果的だ。しかし、現状の日本車はこの信号待ちのアイドリングストップにまだ対応していないから、やらないほうが良い。
イグニッションキーがONの状態でエンジンが掛かっている。信号待ちで左に一段捻るとACCになる。ここでエンジンは止まるが、ウインカーは点滅しない、ワイパーは動かない、エアバッグが作動しない、さらにパワーウインドウが動かないクルマもある。右折か左折をしようとしたときに、信号待ちだからといってアイドリングストップしたら、ウインカーの点滅が消えてしまうから道路交通法違反になるし危険でもある。
さらにATが多いわが国の現状では、いちいちPレンジに入れて止めておき、エンジンが掛かってからDレンジに入れてから発進するという手順は、青信号になってから発進するまでに時間が(数秒)掛かる。これは混雑している道では渋滞の原因になる可能性もある。渋滞はエコドライブから反している。ノロノロ運転することによって、数多くのクルマの燃費が悪化するからだ。
●踏切ではアイドリングストップ
開くときの予想がつきやすい踏切ではアイドリングストップが有効だと思う。ほとんどは電車が通過してから遮断機が上がるから、ドライバーは発進のタイミングを計りやすく、遅れないで操作できるからだ。
●駐車場の料金所ではアイドリングストップ
有料駐車場の出口で料金を払うことがある。チケットを入れて表示された料金を入れ、お釣りがあれば取り、領収書を受け取るという順番だ。このときには自分のタイミングで出発することができるから、アイドリングストップしてもデメリットはないだろう。
エンジンを掛けるときには通常のアイドリングより少し余計に燃料を使うが、それはほんのわずかである。10年前は30秒分と言われていたが、今はコンピュータが進化してもっと短くなっている。さらに駐車場から出るときまだエンジンが暖まっていなかったら、アイドリング中の燃料も濃くなっているから、始動のときの燃料増量はない。だからエンジンが暖まっていないときには、こまめに切るだけ燃料が少なくてすむことになる。

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