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クルマの“塗料”

クルマの塗料・塗装方法の進化

久米 政文[(社)日本塗料工業会 常務理事]

はじめに

 自動車の塗料・塗装は、1940年代に乗用車の生産が開始されてからともに進展拡大してきた。最初は溶剤形プライマー、シーラーの上に溶剤形のラッカーエナメルをエアースプレーガンで手吹き塗装していた。自動車の生産が増加するに従い塗装にも革新的方法が導入されている。省力化や生産性が大幅に向上したのは、下塗りでは60年代に電着塗装、中・上塗りでは80年代に静電自動塗装が導入されてからである。
 今回、クルマの塗装方法の進化について自動車用塗料としての塗料の性状を生かした塗装方法、塗装工程の変遷及び環境対応の最新状況について述べる。

1.自動車用塗装工程

 自動車の塗装は図1の「塗膜構成と機能」に示すように化成処理を別にすると下塗り、中塗り、上塗りの3工程からなっている。下塗りの主な役割は防錆で、中塗りの主な役割は仕上りとチッピング性である。上塗りの役割は意匠性と耐候性である。塗料に要求される性能は時代を経るごとに高くなり、それに応えるため塗料タイプも変化してきた。

図1●塗膜構成と機能
図

2.塗料の性状を生かした塗装

 塗料の性状には、固体を粉砕した粉体塗料もあるが、ほとんどが液体である。液体は絵具みたいに筆やはけで簡単に塗布もできるし、溶液に浸漬し塗装もできる。また、微粒子化し塗布することで均一かつ平滑な塗膜を得ることもできる。
 図2に示すように「塗料性状と塗装方法」には種々な組み合わせがある。自動車塗装は塗料の性状を最大限に生かした塗装方法の導入で大きく変わってきた。
 現在、下塗りの電着塗料は電気泳動法であり中塗り/上塗り塗料は微粒化法で塗装されている。

図2●塗料性状と塗装方法
図

3.自動車塗料・塗装の変遷

1)自動車下塗りの歴史
 電着塗装は、自動車のホワイトボデーを電着塗料の入った大きなタンクの中に浸漬し直流電気を約3分通した後、引き上げて余分な塗料を洗い落としその後、焼付けることでできあがる。ボデーの袋部内部や合わせ目にもそれ相当の膜厚が塗装されるため、狭いところや内面に入りにくいスプレー塗装に比べて防錆性が大幅に向上した。また、水性であり塗装環境も改善され、かつ自動化に最適であり生産性も大幅に向上した。
 下塗りの変遷を図3に示す。電着塗料の最初はクロム酸塩を防錆剤に用いたアニオン形であったが、70年代に防錆力に優れたエポキシ樹脂をアミンで変性したカチオン形になって、耐溶剤性にも優れ中塗の仕上り性も向上した。そして、総合塗膜での仕上り性向上に繋がり現在に至っている。
 電着の役割は防錆であるが、鋼板素材と化成処理との組み合わせに大きく影響される。特に、素材のメッキ鋼板は有機塗膜に比べ犠牲防錆性能は遥に大きく、防錆性が特に要求される外板や車体下回り袋部には多量使用されている。最初は、電気亜鉛メッキ鋼板などであったが、日本の鉄鋼メーカーの技術力で塗膜との付着力と防錆性を両立した合金化亜鉛メッキ鋼板が現在使用されている。
 表面処理は鋼板素材を最初に処理する化学処理であり、素材と下塗りの付着性や防錆性に大きな役割を果たしている。最初はリン酸亜鉛のスプレータイプが使用されていたが、カチオン形電着塗装が導入されたころより耐化学安定性に優れた皮膜が得られるディップタイプのリン酸亜鉛処理が採用されるようになった。合金化亜鉛メッキ鋼板とディップタイプ・リン酸亜鉛処理とカチオン形電着塗料の組み合わせで自動車の下塗りの役割である防錆性の信頼性は大幅に向上した。ただし、ヘミングのバリ部や袋部で水分の溜まる部分はシーリングやワックス処理でさらに防錆性が確保されている。

図3●自動車塗装・下塗の変遷
図

2)中塗りと上塗りの歴史
[1]中塗りの歴史
 中塗りの役割は、仕上り性と耐チッピング性であるが、下塗りと上塗りの付着や仕上り性のつなぎ役でもある。1960年代に焼付け形のアルキドメラミン塗料が採用され性能が向上した。また65年ころには塗装に静電ベルが導入され塗着効率の向上とともに大量生産の基礎が築かれた。80年に入り耐チッピングと耐候性に優れたポリエステルメラミン塗料に切り替わり現在に至っている。80年には、将来のVOC規制に先駆けてモデル的に粉体中塗が採用されたこともあるが、コストと性能のバランスから従来の溶剤形中塗りに変更になった。近年は、VOC規制対応から新規に開発された水性中塗りが採用されはじめている。

図4●自動車用中塗り・上塗り塗料の変遷
図

[2]上塗りの歴史
 上塗りの色と仕上り性は、自動車のデザインとともに顧客の目に留まる重要な部分である。上塗り色は大きく分けてソリッドカラーとメタリックカラーに分けられる。また、塗装工程から1層で仕上げる1コート1ベイク(1C1B)と2層を1度の焼付けで仕上げる2コート1ベーク(2C1B)の2通りがある。ソリッドカラーの塗装初期はラッカータイプの上塗であったが、50年代後半に焼付け形のソリッドカラーの塗装がスタートした。80年代より性能の向上のためポリエステルメラミンタイプに切り替わった。またその後、生産性、耐汚染性よりアクリルメラミンタイプの2C1Bが多用されている。
 メタリックカラーは、60年代に入りメタリックベース/クリヤーの1C1Bでアルキドメラミンタイプが採用された。ただし、長期耐候性よりアクリルメラミンタイプに切り替わった。1970年代にエアー霧化静電塗装機が導入され生産性と仕上り性が向上したが、90年代には回転霧化静電のミニベル塗装機と塗装用ロボットが採用され現在に至っている。同じ90年代に耐酸性や擦り傷性対応から高級車を中心に酸エポキシタイプのクリヤーも採用されている。2000年代に入るとVOC削減対応から水性ベースコートが採用され拡大中である。水性の導電性特性からボルテージブロックが必要であり塗装装置もロボット塗装機と組み合わされたカートリッジベルシステムが開発され使用されている。塗装工程として特記すべき新工程は、3ウェット工程である。中塗りの乾燥工程を省略しCO2を削減した溶剤形の3ウェットオン塗装が02年に導入された。05年には水性中塗/水性ベースコート/溶剤クリヤーの水性3ウェットオン塗装が導入されている。現在、仕上り性の管理幅容易性より大衆車や軽自動車で先行採用されているが、さらなる開発研究がされ、拡大されていくことと推察するし、また期待したい。
 上塗塗装機の大まかな移り変わりを図5に示す。その都度、時代の要求に応えて成長してきた。

図5●自動車塗装(上塗り)の変遷
図

[3]自動車を彩る上塗り塗料
 上塗りの役割は、意匠性と耐候性である。特に意匠性は塗料の重要な要素のひとつでもあるが、顧客が自動車を購買するときの判断要素のひとつでもある。自動車を彩る塗料は数十種類の着色顔料と金属やガラスなどの光輝顔料の組み合わせにより数千万色を出すことができる。新車のボディーカラーはこの膨大な色の中から購入する人の年齢・性別・使用目的や車体の大きさ・形状など細かく設定されたコンセプトや流行色の予測などを考慮の上、自動車メーカーと塗料メーカーのクリエーターとの共同作業で作り出される1)
 自動車ボデー色の最近の変遷を図6に示す。
 (社)日本塗料工業会は、毎年、自動車補修塗料の色見本帳として活用されているオートペイントカラーズ(旧オートカラー)を発行している。

図6●自動車ボデー色の最近の変遷
グラフ

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