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特集 二輪車、その夢と楽しさとこだわり

特集●“バイクライフを満喫するライダーたち”―その[1]
〜カワサキ750RS・Z2の持つ“大和魂”に惚れ込んだ、
骨太ライダーの“バイク満喫術”〜

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前田 紀貞(建築家)

ひとつの出会いが、運命を変えた

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レストアしたカワサキ750RS・Z2に跨って走る

「最初のバイクは、スピードに憧れた高校時代からですね。2ストロークのカワサキMACHVです。大学時代は、スズキGS400に乗っていました。卒業して、いったんバイクから離れたんですが、また30代半ばからアメリカンタイプのカワサキ・VALCANで復活ですね」と、建築家の前田紀貞氏は語り始めた。
 ただ、VALCANに乗っていると“おおらか”ではあるが、“戦闘的”ではなかった。そのことに気づかされたのは、ひとつの出会いからだった。
「たまたま自分の無二の親友が究極のカワサキのZ2マニアで、Z2をレストアして販売しているのですが、そこに足繁く通ううちに感化され、だんだんZ2が良くなってきてしまったんです」。
 そうなれば話は早い。前田氏がVALCANからZ2に乗り換えるのに、そう時間はかからなかった。

初めて胸にこみ上げてきた“熱いもの”

「VALCANの次は、外国製に乗るのかなぁなんて漠然と考えていたけれど、Z2と出会って目を覚まさせてくれましたね。生粋の日本のバイクといったら、Z2しかないんですよね」。
 一切輸出はしていないモデルだったZ2モデル。完全に日本市場を念頭に置いて作られたバイクは、“大和魂のバイクだ”と氏は絶賛する。
「ボロボロのフルオリジナルの49年型Z2を入手して、塗装からエンジンのレストアから、徹底的に手を入れました。全塗装で色はシルバーメッキです」。
 ブレーキやキャブレター等の、安全上変えなくてはならない部品は交換したが、フレームもオリジナルを生かしている。ガソリンタンクも、最近市場に出始めたリイシューでなく、当時のもの。リイシューは、オリジナルとはやはり微妙に形が異なるそうだ。そのガソリンタンクを再塗装するためには、オリジナルの塗装を剥がさなければならない。その方法は塩酸で塗膜を溶かすのだが、それにガソリンタンクが耐えられるか。それが心配だったという。
「塗装屋は、“そんなことしたら、タンクの鉄板に穴が開いてしまいます”とゴネていたし……」。
 しかし、ガソリンタンクは耐えてくれた。それを聞いたとき、思わず胸にこみ上げてくる熱いものがあったという。

“ゼロ戦”のような感覚で乗る、Z2

 今までは雨であっても構わずにバイクに乗っていたが、このZ2は雨が降ったら絶対に乗らない。
「今まで“モノを大事にする”という感覚はあまりなかったんですが、このZ2は大事にしてやりたい。それでまた、実は塗装もオリジナルのままの48年初期型のZ2も、ごくごく最近手に入れたんです」。
 そのバイクたちに「竜」「虎」と名付けたのも、もちろん初めてのこと。49年型の「竜」は1年落ちということもあって、今年3月にカスタマイズが完了した。そしてどうしても欲しくなってしまって手に入れた48年初期型は、すべてオリジナルのコンディションで残してある。
「Z2は、使いづらいのがまた魅力のひとつです。人に例えて言えば、最初はなかなか打ち解けないのに、ひとたび一線を越えると、とことんまでついて来るみたいな……」。
 だからこの二台のZ2を自分のものとするには、まだまだ相当な時間がかかるという気がするとも。
「Z2に乗っていると、あたかも“ゼロ戦”に乗っているような気持ちになります。振動、音、雰囲気、完全に自分の体内の血がグツグツと沸騰するような感じがして。そういう感覚に出会えたのは、このZ2に乗って初めてでしたね」。
 だからと言って、レーサーみたいにクィックィッとコーナーを攻めていくのとも違う。自分自身が、“戦闘的”な気持ちで、“高揚していく”という感覚だという。

Z2の存在は、リ・スタートの「象徴」

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Z2とのツーショット

 二台のZ2の選び方は、まったくの気分次第。ただし乗り味は、まったく違ったものだという。48年初期型は言ってみれば“粗野”で“荒々しい”部分が残っているのに対し、49年型は比較的スムースななかに“尖った”部分を感じさせるという。
「今、思うんですが、40過ぎてどこか自分のなかでゆっくり過ごそうという甘い気持ちがあったなと。年を重ねたらアメリカンという、ありがちなシナリオに汚染されていたのではないかと」。
 しかし、シナリオ通りに乗せられて進むのは、おかしいと気づいたわけだ。気がついて、本当に良かったと前田氏は言う。
「まだ47なんで、まったくの青二才です。棺桶に片足突っ込むのは、まだまだ早い(笑)」。
 バイクだけでなく、人生でも、また仕事としての建築でも、“リ・スタート”という感覚が、このZ2に肩を叩かれて、覚醒したわけだ。
「Z2は、人生におけるターニング・ポイントみたいな存在と言えるかもしれない」。
 ただのモノであることは承知しているが、自分に及ぼしてくれた影響は、掛け替えのない大きなものだった。ゆえに存在としてはモノ以上、まさに“相棒”だと言う。
 自分を変えたいと考えている同氏は、また“軟弱そうなイメージ”の漂うサーフィンを、思い切って40歳をすぎてから始めている。実際にやってみてわかったこと、それは大きな波に乗るには強靭な精神力がいるということ。
「バイクに乗るのと、どこか共通しているね。挑戦していく戦闘的な姿勢が必要で……」。
 自分を変えていく手段として、“Z2というバイク”は存在している。それが前田氏のバイクに対する“持論”でもあった。

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