JAMA 社団法人日本自動車工業会Englishヘルプサイトマップ   
自工会の概要リリース/会見データファイルライブラリー
ホーム > ライブラリー > JAMAGAZINE > 2008年12月号

環境にやさしいクルマづくりをめざして─燃費・騒音・排出ガスの世界的な基準・規制動向─

日米欧などにみる排出ガス規制の現状と今後

瀬古 俊之[(財)日本自動車研究所 主席研究員]

自動車排出ガス規制は大幅に強化されてきた!

 自動車は高い利便性や移動性を人間社会にもたらした反面、大気汚染や地球温暖化など各種の環境問題を引き起こしてきた。図1に、自動車からの排出物の概要を示す。排出物には、排出ガス、粒子状物質及び温室効果ガスなどがある。排出ガスには光化学スモッグの原因物質や二次粒子生成の生成物質が含まれる。粒子状物質には、Solid Carbon、有機溶剤可溶分(SOF)、サルフェート等から構成される。これらの排出ガス濃度や粒子状物質濃度が高い場合は、喘息などの健康影響被害が発生することが懸念される。そこで、大気汚染環境を改善するため、排出ガス規制が導入されてきた。特に、1970年の米国における大気浄化に関したマスキー法の成立をはじめとして、自動車の発展とともに排出ガス規制は大幅に強化されてきた。現在では、日米欧の先進国では従来にない厳しい排出ガス規制が施行されている。また、厳しい排出ガス規制をクリアーするには、燃料性状の改善も必須であり、燃料規格の改定が行われている。ここでは、自動車を取り巻く排出ガス規制動向と燃料品質の変遷を概説する。

図1●自動車からの排出物
図

乗用車の排出ガス規制動向

 図2に、各国のガソリン乗用車の排出ガス規制(テールパイプ・エミッション)の推移を示す。図2より、日米欧では排出ガス規制は次々と強化されており、特に、欧州と日本では今後とも排出ガス規制の強化が予定されている。一方、発展途上国では、欧州等ですでに施行された規制を導入している。

図2●各国のガソリン乗用車の排出ガス規制(テールパイプ・エミッション)の推移
図
出展) 参考文献(1)から作成

 表1に、日米欧のガソリン乗用車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較を示す。表1より、EUのTHCとNOxの規制値が日米に比べて高いが、EUはこれ以降、EURO5及びEURO6の規制を予定しており、これらの段階になれば日米並みか、それ以上になるものと予想される。また、米国のTier2規制は2007年以降完全実施となる。これらより、日米欧の2010年ごろのガソリン乗用車の規制値は非常に低くなり、排出ガス規制の最終段階レベルになると予想される。

表1●日米欧の最新のガソリン乗用車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較
図
出展) 参考文献(2)から作成

 日本では、2009年の排出ガス規制には試験モードに新たな実走行状態に近いモード(JC08モード)が用いられることになっている。また、米国のTier2規制では、11段階(乗用車、ライト・デュティ・トラックは10段階)の排出ガス規制値(BIN1〜BIN11)が設定されており、NOxについては「フリート平均NOx規制」が適用されている。「フリート平均NOx規制」とは、各自動車メーカにおいて各モデルイヤーに販売した車両の排出ガスカテゴリー(BIN1〜BIN11)別の平均NOx基準がフリート平均基準値(0.07g/mile≒0.044g/km)をクリアーすることを義務付ける規制である。この規制にはクレジット制度が導入されており、当該モデルイヤーでNOx基準値を超過した場合、当該モデルイヤー以外の余裕分で超過分を相殺できるようになっている。また、米国のカリフォルニア州では、連邦とは異なった厳しい排出ガス規制を施行している。その特徴として、(1)低排出ガス車(LEV:Low Emission Vehicle)の導入とフリート平均NMOG(Non-Methane Organic Gases)規制の適用、(2)ZEV(Zero Emission Vehicle)の義務づけ、(3)反応性調整係数(RAF:Reactivity Adjustment Factors)の適用が上げられる。(1)については、車両の排出ガス量に応じて、次の車両区分に分類し、各区分のNMOG基準値の平均値を規制している。車両区分は、LEV、ULEV(Ultra Low Emission Vehicle)、SULEV (Super Ultra Low Emission Vehicle)、ZEVになる。(2)のZEVの義務づけでは、2005年以降、車両販売台数の10%分のZEVの販売・リースを義務づけている。但し、ZEVではなく、排出ガス量が極めて少ないPZEV(Partial Zero Emission Vehicle)による代替も認めている。(3)のRAFの適用は、石油代替燃料を使用した低排出ガス車の導入促進をねらっている。アルコールなどの代替燃料を用いた場合、排出ガスの反応性(オゾン生成ポテンシャル)が低くなる。その効果を反応性調整係数(RAF:1以下)とし、NMOG排出量にRAFを掛けてNMOG基準値と比較している。尚、米国の規制(テールパイプ・エミッション)ではガソリン乗用車とディーゼル乗用車の区別をつけていない。
 図3に、日米欧の最新のディーゼル乗用車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較を示す。欧州のEURO4の次の規制であるEURO5規制は2010年ごろに施行が予定されており、PM規制値として0.003g/kmから0.005g/kmの値が議論されている。従って、2010年ごろには日米欧とも、NOx規制値は0.08g/km以下の値、PM規制値は0.003g/kmから0.006g/kmの間の値になると予想される。また、国際連合(UN:Union Nations)の下部組織である排出ガス・エネルギー分科会(UN-ECE/WP29/GRPE)の「PM測定法の改良」(PMP:Particle Measurement Programme)において、粒子数の測定方法が検討されており、欧州ではEURO5またはEURO6から粒子数規制が見込まれる。

図3●日米欧の最新のディーゼル乗用車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較
図

ディーゼル重量車の排出ガス規制動向

 図4に、ディーゼル重量車におけるNOxとPMの規制強化の推移を示す。図4より、NOxの2009年の目標値は1974年の規制値の1/20になっており、PMの2009年の目標値は1994年の規制値の1/100になっている。ここ十数年の間に、排出ガス規制強化が大幅に進んでいることがわかる。

図4●ディーゼル重量車のNOxとPMの規制強化の推移 2)
図

 図5に、日米欧におけるディーゼル重量車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較を示す。EUでは、2008年にEURO5規制が予定されるが、その後、EURO6規制も見込まれる。従って、日米欧のディーゼル重量車の排出ガス規制値は2010年ごろにはNOxはおよそ1g/kWh以下になり、PMはおよそ0.03g/kWh以下になると見込まれる。また、日本の2009年のディーゼル重量車のNOx目標値は0.7g/kWhであるが、挑戦目標値として「0.7g/kWhの3分の1程度」を決めており、さらなるNOx低減の可能性を求めている。この挑戦目標値の具体化の可否は2008年ごろの大気質状況、技術開発状況等を考慮して決める予定である。

図5●日米欧におけるディーゼル重量車の排出ガス規制値(テールパイプ・エミッション)の比較
図

燃料品質の変遷

 現在施行されている排出ガス規制および今後施行予定の排出ガス規制をクリアーするには燃料品質の改善が必須である。特に、厳しい排出ガス規制をクリアーするにはガソリン車及びディーゼル車とも排出ガスの後処理技術が必要であり、この後処理技術の確立には燃料中の硫黄分の低減が重要になっている。
 図6及び図7に、ガソリン中及び軽油中の硫黄分の規制値の推移を示す。図6及び図7より、2010年ごろには日欧のガソリン及び軽油の硫黄分は10ppm以下になる。ただし、日本では、ガソリン中の硫黄分は2008年から10ppm以下の規制が施行される予定であるが、2005年より硫黄分10ppm以下のガソリンが市場に供給されている。軽油中の硫黄分においても規制は2007年から10ppm以下となっているが、市場へは2005年から10ppm以下の軽油が供給されている。このように日本においては供給サイドの自主的な対応により早期に超低硫黄化が達成されている。

図6●日米欧のガソリン中の硫黄分規制値の推移 3)
図

図7●日米欧の軽油中の硫黄分規制値の推移 3)
図

排出ガス規制動向のまとめ

 図8に、日米欧のディーゼル乗用車の排出ガス規制の推移を示す。2015年ごろまでには、日米欧の先進国ではガソリン車、ディーゼル車を問わず排出ガス規制は最終段階まで到達すると予想される。それに伴い、大気質が改善され、浮遊粒子状物質(SPM)や二酸化窒素(NO2)などは局所的な汚染地域を除いておおむね大気環境基準を達成すると見込まれる。今後は発展途上国からの汚染物質の流入や固定発生源対策がクローズアップされると思われる。また、発展途上国は、欧米の排出ガス規制を追従して徐々に排出ガス規制強化を推進していくものと思われる。

図8●日米欧のディーゼル乗用車の排出ガス規制の推移 4)
図

(参考文献)
1)『排出ガス・燃費関連法規制動向』、DENSO、2007年2月15日発行
2)中央環境審議会:今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第八次答申)、平成17年4月8日
3)サルファ・フリーについて、石油連盟ウェブサイト、http://www.paj.gr.jp/eco/sulphur_free/index.html
4)経済産業省資料:次世代自動車・燃料イニシアティブとりまとめ、経済産業省ウェブサイト、http://www.meti.go.jp/press/20070528001/initiative-torimatome.pdf

(せこ としゆき)

──────

← 前へ 6/9 次へ →

   
   
Copyright (C) Japan Automobile Manufacturers Association, Inc.