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特集 韓国自動車産業研究

グローバル化する韓国自動車産業の行方
―2013年に世界650万台生産をめざして―

ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター長 水野 順子

はじめに

 近年、韓国自動車メーカーの海外生産が急ピッチで拡大している。韓国自動車メーカーと言ってもその主体は、韓国内市場の80%以上を占める現代自動車グループ、すなわち現代自動車及び起亜自動車である。現代自動車グループは、2006年に世界で384万台を生産し、日産とホンダの生産台数を抜いた。09年は世界的な金融危機の影響で、世界の自動車生産台数は11.8%減って、上位メーカーのトヨタは21.3%減の747.7万台、GMは23.7%減の667.4万台、VWは6.1%減の644.0万台、フォードは14.8%減の563.8万台と、軒並み減産となった。このような状況で韓国の現代自動車グループは、唯一増産した上位メーカーで6.5%増532.9万台となり世界5位になった(『FOURIN 世界自動車調査月報』2010.5. No.297)。
 現代自動車の鄭夢九(チョン・モング)会長は、09年の新年の挨拶で「販売拡大だけがグローバルな経済危機を克服できる唯一の方法。不況のときこそ顧客が企業の運命を決定する」として、国別に顧客のニーズに合う仕様のクルマを競争相手より一足先に開発して供給しシェアを拡大することが、不況を乗り越える最善策とした(『サーチナニュース』2010年1月26日)。
 現代グループは、2013年までに内外での合計生産台数を650万台にするという目標を立て海外生産を拡大している。現代グループが急ピッチで海外生産拠点を拡大しているのは、3つの理由があろう。ひとつには、造船やDRAM(コンピュータの主記憶装置やデジタル・テレビやデジタル・カメラなど多くの情報機器の記憶装置に用いられる部品)産業が日本に追いつき追い越したように、自動車も価格に比べて品質が良いという強みに加え、デザインや性能面でも大きく向上し、価格以外の競争力がついたので、ここで一挙にトヨタを追い越すチャンスと考えていること、ふたつ目には、中国メーカーの追撃も無視できないこと、三つ目には、ガソリン車が次世代自動車に代替する前にトップメーカーになり高収益を確保しておかなければ、次のステージで開発をするにしても、提携をするにしても有利に展開できないと考えているからであろう。世界市場シェアを拡大するために増産計画を立てるのであるが、国内ではさまざまな制約があるので、今後は海外で増産するしかないというのが急ピッチで海外生産を拡大している理由である。

海外進出計画

 09年12月6日発表の韓国自動車工業協会と韓国自動車産業研究所の見通しによると、現代自動車グループは、2011年末に364万台の生産能力を海外に持つとしている。その内訳は、中国の北京に90万台(第1、2、3工場)、上海近郊の塩城に44万台、インドのチェンナイに60万台、アメリカ・アラバマ州とジョージア州に計60万台、チェコ並びにスロバキアに計60万台、トルコ20万台、ロシアのサンクトペテルブルグとブラジルに各々15万台である(『中央日報』2009年12月7日)(表1、2)。

表1●現代自動車グループのアジア(韓国除く)主要生産拠点

メーカー 拠点 所在地 稼働
現代自 中国 北京現代汽車
(現代自 50%)
第1工場
北京市

02年10月(30万台)

第2工場
08年4月(30万台)
第1エンジン工場
04年4月(設立)
第2エンジン工場 07年9月
威亜汽車発動機(現代自 22%、起亜 18%) 山東省日照市
07年2月
栄城華泰汽車 山東省栄城市
2000年9月(7万台)
インド Hyundai Motor India
(現代自 100%)
第1工場
Tamil Nadu州
98年9月(30万台)
第2工場
Chennai
08年2月(30万台)
エンジン・
変速機工場
Tamil Nadu州
08年7月
起亜自 中国 東風悦達起亜
(起亜 50%)
第1工場
Kancheepuram
02年7月(設立)(13万台)
第2工場 江蘇省塩城市
07年12月(30万台)
出典)『韓国自動車・部品産業 2009』FOURIN、89ページ。
注)中国には30万台規模の第3工場を2011年末までに建設の予定。

表2●現代自動車グループの欧州主要生産拠点

メーカー 拠点 所在地 稼働
現代自

トルコ

Hyundai Assan Otomotive Sanayi
Ve Ticaret A.S.

Istanbul

97年7月(10万台)

チェコ
Hyundai Motor Manufacturing Czech
Nosovice
08年11月(30万台)
ロシア
Hyundai Motor Manufacturing RUS
St.Peterburg
11年1月(10万台)
TagAZ
Rostov-ondon
2000年に委託生産開始
起亜自 スロバキア Kia Motors Slovakia Zilina 06年12月(30万台)
出典)『韓国自動車・部品産業 2009』FOURIN、86ページ。
注)トルコは20万台に、ロシアは15万台に拡張計画。

 現代自動車は、09年秋に欧州のチェコで、起亜自動車はアメリカ・ジョージア州で新工場を稼働させた。また現代自動車は09年11月に、2011年末の完工を目標に北京で年産30万台規模の第3工場を建設すると発表した。さらにブラジルのピラシカバに同じく2011年の完工を目標に年産15万台規模の工場を2010年初めに着工すると発表した。
 起亜自動車は、今年6月にインドの南部チェンナイに年産30万台規模の完成車工場を建設する計画を明らかにした。操業開始は2012年の予定である。起亜自動車は、2013年650万台生産目標達成のためには、生産台数を09年の150万台(このうち国内生産は111万台、海外生産は39万台)から2013年には278万台(このうち国内生産は143万台、海外生産は135万台)に増やす必要がある。この間、国内生産台数を32万台に増やすのに対して海外生産は96万台増やす計画である。起亜自動車は、国内の工場では賃金の上昇や労組問題などで制約があるので国内での拡充は得策ではないとし、もっぱら海外での生産を増やす計画を立てている(『朝鮮日報』2010年6月24日)。グループ全体の投資は、09年の9.4兆ウォンに対して2010年は10.5兆ウォンの予定である(『FOURIN アジア自動車調査月報』2010.6. No.42)。
 以下では、現代自動車グループの海外生産と販売について、価格競争の激しい振興市場であるインド及び中国、並びに技術競争の激しいアメリカ及び欧州の近年の状況を概観し、次世代自動車である環境対応車の開発状況について述べる。

表3●現代自動車グループの世界地域別国別自動車生産台数(2008/2009年)

(単位:台)
地域

現代/起亜
2008年
2009年
(前年比)
北米 米国
237,042
196,061
(▲17.3%)

237,042
196,061
(▲17.3%)
南米 ブラジル
ベネズエラ
エクアドル

6,046
6,432
6,814
3,061
6,577
( − )
(▲49.4%)
(2.3%)

12,478
16,452
(31.8%)
中・東欧 チェコ
スロバキア
12,050
201,507
118,000
150,015
(879.3%)
(▲25.6%)
ロシア
ウクライナ
トルコ
176,219
60,215
83,942
64,216
12,557
48,830
(▲63.6%)
(▲79.1%)
(▲41.8%)

533,933
393,618
(▲26.3%)
アジア・大洋州 韓国
中国
台湾
2,728,732
439,390
4,541
2,744,055
815,302
5,327
(0.6%)
(85.6%)
(17.3%)
インドネシア
マレーシア
フィリピン
ベトナム
2,923
3,210
453
10,324
1,053
4,098
703
15,314
(▲64.0%)
(27.7%)
(55.2%)
(48.3%)
インド
パキスタン
486,052
5,515
559,617
1,728
(15.1%)
(▲68.7%)

3,681,140
4,147,197
(12.7%)
アフリカ・中近東 エジプト
イラン
20,972
518,963
14,189
561,265
(▲32.3%)
(8.2%)
539,935
575,454
(6.6%)
 
世界合計(イラン除く)
世界合計(イラン含む)
4,485,565
5,004,528
4,767,517
5,328,782
(6.3%)
(6.5%)
メーカー発表値 4,180,717 4,639,262 (11.0%)
出典)『FOURIN 世界自動車調査月報』 2010.5、No.297。
注)他社工場、組立委託先での自社製品分を含む。現代/起亜の2009年イランは乗用車のみ(斜体数字)。現代/起亜のメーカー発表値は自社工場のみの台数。現代/起亜の中国は北京汽車(現代自)、東風汽車(起亜)それぞれとの合弁生産台数計。

インドでの生産

 現代自動車は、インドのチェンナイに年産30万台の工場を2つ保有しており、09年に対前年比14.4%増加の約55.9万台のクルマを生産した(表4)。

表4●現代自動車のインドにおけるモデル別生産台数

(単位:台)
車種別 2008年 2009年 対前年増減率(%)
i10
238,758
272,069
14.0
i20
23,112
118,627
413.3
Santro
133,669
116,236
▲ 13.0
Accent
38,128
28,677
▲ 24.8
Verna
22,497
17,141
▲ 23.8
Gets
32,917
6,594
▲ 80.0
Sonata
322
515
59.9
Elantra
29
1
▲ 96.6
合計 489,432 559,860 14.4
出典)『FOURIN 世界自動車調査月報』 2010.4、No.40。

 モデル別には07年から生産を始めたi10が約27万台、08年から生産を開始したi20が約11.8万台などである。現代自動車は、09年28.9万台をインド国内で販売し、残り27万台は輸出している。主な仕向け地は欧州である。前年の08年にインドで生産したi10の13.4万台をインドから第三国へ輸出したが、その多くが欧州へ輸出された。また08年11月からインドで生産されたi20も月間1万台が欧州へ輸出された。09年にはi10をベトナムに向けて輸出開始した。2010年にはオーストラリア、ニュージーランド向けの輸出も始めた。同年には周辺の新興諸国中心に仕向け地を10ヵ国追加の方針である。2010年1月時点での輸出先は109ヵ国である。輸出先は、欧州の景気悪化もあって中南米やアジアへシフトしたいとしている(『FOURIN アジア自動車調査月報』2010.4. No.40)。
 現代自動車は、2010年の現地生産目標を58万台、インド国内での販売目標を過去最高の31万台としている。今後インド市場の拡大が見込まれることから、インドの工場を輸出基地から内需向けの生産拠点へと事業戦略を転換する計画である。そのため輸出比率をこれまでの50%から40%に引き下げる。2010年以降はチェンナイ工場から欧州向けに輸出してきたi20モデルの生産6万台をトルコに移管し、インドでは国内向けの生産を増やすとしている。
 他方、上述したように起亜自動車は、2010年6月24日インド南部のチェンナイ工場に年産30万台規模の完成車工場を建設し2012年から操業を開始する計画であると発表した。起亜自動車がインド工場の設置を推進するのは、主力市場の欧州での需要が景気低迷で落ち込み、一方インドの乗用車市場は2009年が140万台規模で韓国内の110万台を上回ることに加えて2015年には300万台まで成長することが見込まれるからである(『朝鮮日報』2010年6月24日)。

インドでの販売

 現代自動車は、インド国内の販売を拡大するため、国内販売店を2010年3月の285ヵ所から2010年末までに320ヵ所に増やす予定である。同時に新モデルも投入する。09年からサービスの充実をアピールするためインド全土で自動車の無料点検サービスを行い、2010年3月までに各地で累計8回実施している。また、各地で販売促進のための自動車ローンの業務提携を増やしている。
 インドでは、スズキが圧倒的なシェアを持っているが、現代自動車と現地のタタ・モーターズが2位争いをしている。現代自動車は2010年1月から単月の販売ではタタを下回っていたが、4月にタタを抜いて2位になり2.8万台を販売した。燃費効率などを改善し4月上旬に発売した小型車のi20の新モデルが販売増加の要因になった(『日経産業新聞』2010年5月11日)。
 今後、現代自動車は、5,000〜6,000ドル台でインド国内及び新興市場で販売する低価格車を開発して、世界戦略車としてインド南部のチェンナイ工場で生産する計画である(『日本経済新聞』2009年9月16日)。計画では、新型車は800ccエンジンを搭載し、インド国内及び振興諸国市場に輸出する方針である。09年10月には海外で4拠点目の研究開発拠点をインドのアーンドラプラデシュ州に完工した。ここでは小型車のプラットフォームの開発などを行うとしている。

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