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年頭に際して

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一般社団法人 日本自動車工業会 会長
豊田 章男

新年あけましておめでとうございます。年頭にあたり、ご挨拶を申し上げます。

未曾有の大震災から2度目のお正月を迎え、今なお仮設住宅での生活を強いられている被災者の方も多くおみえになると思います。本年こそは更に力強く復興を進める一年となりますことを祈念申し上げます。

さて、昨年の自動車市場は、欧州の債務危機による欧州市場の大幅な落ち込みはありましたが、中国やアジアなどの新興国を中心に成長し、米国も1400万台レベルに回復するなど、堅調に推移した一年であったと思います。
本年も様々な下振れリスクはありますが、グローバルには自動車産業はまだまだ成長産業であり、国際競争はますます激しさを増していくと思います。

一方、日本の状況ですが、補助金の効果もあり、昨年の自動車市場は500万台レベルに回復しましたが、超円高の継続により輸出は競争力を失い、政府・日銀の数次の金融緩和にかかわらず、15年間も続くデフレは一向に解消されないままです。

このような経済の閉塞感がある一方で、最近私が強く感じておりますのは、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災といった試練を経験し、私たち日本人は、忘れてしまっていた価値観、かつて日本の社会が持っていた価値観を取り戻そうとしているのではないかということです。
「心」や「絆」の時代とも言われますが、お金では計れない価値が見つめ直されているのだとも思います。

これは、産業や企業について申しますと、短期的な利益だけにとらわれることなく、国や地域社会、お客様、取引先といった様々なステークホルダーとともに歩んでいくことではないかと思います。特に私たち製造業については「ものづくり」や「商品」を通じてお客様や社会の期待に応えていくことが、これまで以上に大切になっていると感じます。

この数年の様々な試練を乗り越えることができたのも、支えていただいた多くの皆様のおかげです。本年は「感謝」の気持ちを大切に、自動車産業のみならず、日本の「元気」「笑顔」のために、引き続き努力してまいる所存です。
そのために、「国内市場の活性化」と「事業環境の改善」を中心に、本年も業界一丸となった取り組みを展開してまいります。

<国内市場の活性化に向けて>

縮小傾向にある国内の自動車市場を活性化していくためには、まず私たち自動車業界が魅力ある商品を提供できるように最大限の努力を続けていくことは申し上げるまでもありません。

また、多くの方にクルマやバイクの魅力を感じていただけるよう積極的に取り組んでまいります。
昨年10月に開催した「お台場学園祭2012」では、会場が若者たちの笑顔であふれるのを実感いたしました。よく「若者のクルマ離れ」と言われますが、「自動車メーカーから若者に近づく努力をすれば、必ずやクルマやバイクに興味をもっていただける」という思いを強くいたしました。

この勢いを本年11月に開催する第43回東京モーターショーへとつなげてまいります。今年の東京モーターショーでは、クルマやバイクを知り尽くした方はもちろん、普段はなじみのない方も、実際にクルマやバイクを見て・触れて・体感して、魅力・楽しさを感じていただければと願っております。

さらに、国内市場の活性化に向けては、お客様がクルマやバイクをお求めやすい環境を整備していくことが必要です。特にお客様に過重な負担を強いている自動車関係諸税の抜本見直しは、必ずや実現させなければなりません。
昨年末の衆議院選挙により新政権が発足し、税制改正については越年いたしましたが、引き続き関係団体とともに自動車取得税と自動車重量税の早期廃止を強く訴えてまいります。

<事業環境の改善に向けて>

私は昨年5月の会長就任以来、様々な場面で「日本のものづくりを守り抜く気概」で取り組むと申し上げてまいりました。

しかしながら、歴史的な超円高、経済連携協定の遅れ、電力料金の値上げなど、いわゆる「六重苦」のもと、国内事業は大変厳しい状況が続いております。このままでは、民間企業の必死の努力の限界を超え、「日本のものづくり」を守り続けていくことは難しくなってしまうのではないかという強い危機感を持っています。

私たちは、政府との対話を通じ、自動車業界が日々地道に積み重ねている努力、頑張りを一人でも多くの方にご理解いただき、「六重苦」の改善へとつなげてまいりたいと思います。

また、グローバルに事業を展開する私たち自動車業界にとって、世界の国々との健全な外交関係は事業活動の重要な基盤のひとつです。この点での政府の取り組みを期待いたします。

<おわりに>

上記に加え、「安全・安心で快適なモビリティー社会」の実現は、私たち自動車業界の使命であります。先進安全・環境技術の開発や、これらを搭載した自動車の開発、市場への積極投入に引き続き取り組んでまいります。

昨年は多くの国々で新たな指導体制がスタートし、日本でも昨年末に新内閣が発足いたしました。
日本では、大震災からの復興も道半ばですが、デフレや超円高の克服といった経済問題への対応も待ったなしです。将来への不安を払拭し、安心して暮らせる社会をつくっていくためには様々な課題が山積しております。

私たち自動車産業は、今こそ、この国に産業を興した多くの先達の志に立ち返り、私たちの努力が「日本の元気」、「日本の笑顔」につながるのだという気概で「日本のものづくり」を守るために最大限の努力をしてまいります。

また同時に、この思いを政府との対話を通じて多くの方にご理解いただき、是非とも大胆な政策の企画・実行をお願いしたいと思っています。国や地域社会を思い、頑張った人、頑張った企業が報われる社会にしていただきたいと切に願います。

今後とも皆様方の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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