自工会リリース


平成12年5月18日

平成12年度事業計画

 平成12年度のわが国経済は、個人消費ならびに雇用情勢等、一部に不透明感があるものの、相次いだ大型の経済対策や積極的な財政出動など、景気回復を最優先にした政府の経済政策によって、緩やかながら改善に向かうものと見込まれる。

 平成12年度の四輪車国内需要は、民間需要主導の本格的な景気回復が見込まれることに加え、積極的な新商品投入やモデルチェンジ等により買い替え需要が期待されることから、全体的には昨年度実績を上回ると見込まれる。また、二輪車については個人消費と法人需要の低迷が影響して減少するものと見込まれる。  輸出は、為替の動向等の不安定要素はあるものの、アジアをはじめ中近東・中南米市場等の回復により、四輪車、二輪車ともに増加するものと見込まれる。

 今日、経済・社会構造全体が変革している中にあって、わが国自動車産業も大きな転換期を迎えており、自動車各社においても環境問題や情報化への対応のため、その持てる経営資源を集中的、効率的に運用すべく、世界的規模での提携・協力関係を加速化させている。
 このような自動車産業を取り巻く内外の情勢変化に対して、適切かつ機動的な対応をはかるため、当会は本年度より新たな組織体制の下、各委員会の活動を通じて以下の重要諸課題に対して重点的な取り組みを行う。

I.自動車市場の活性化
 自動車産業の低迷が長期化することは、わが国経済の再生にとっても多大な影響を及ぼすことから、自動車市場を活性化させ需要の回復に努めることが自動車業界に与えられた社会的責務であると認識しており、このため、本年度においても「自動車市場の活性化」を重点課題の一つと位置づけ、積極的な活動を展開していく。
 具体的には、環境・安全に配慮しつつ最先端技術を採用した魅力ある商品の提供によって需要の喚起に努めるとともに、自動車の利用環境改善をはかるため、自動車関係諸税のユ―ザー負担軽減と適正化に向けた活動を展開する。また、広く社会に対する積極的な広報活動に努めるとともに、市場動向の実態把握や国内外自動車関係資料の整備・充実に取り組むなど、きめ細かな情報収集と発信に努め、社会と調和のとれたクルマ社会の実現を目指す。

II.環境問題への対応
かねてより自動車業界の総力を挙げて取り組んできた環境問題については、本年度においても実効ある取り組みを積極的に推進する。
 とりわけ、ディーゼル車の排出ガス低減対策については、新長期規制の早期達成に向け関係業界とも協力しつつ積極的に技術開発を推進するとともに、粒子状物質削減のための対策を進める。
 また、既販車についてはユーザーニーズを踏まえた粒子状物質低減対策を検討するとともに、最新規制適合車への代替が促進されるよう関係方面へ要望していく。
 自動車燃費の改善については、新燃費目標の早期達成等を通じて世界トップレベルの低燃費自動車の提供を目指す。
使用済み自動車処理対策については「自主行動計画」に基づく着実な対応をはかるとともに、4年間にわたるシュレッダーダストの削減と有効利用等に係わる研究成果を広く関係事業者等に提供し、リサイクルの一層の促進に努める。
さらに、カーエアコン用特定フロンの回収率向上に向けた取り組みを関係団体とも協力しつつ推進するとともに、未使用エアバッグの適正処理をはかるための回収・処理システム事業の円滑な運用に努める。
 こうした取り組みをより効率的に進めていくため「使用済み自動車リサイクル促進支援センター(仮称)」の設立に積極的に協力し、使用済み自動車に関する総合的なリサイクル・適正処理体制の確立を目指す。

III.安全問題への取り組み
 安全問題への取り組みについては、車両の安全対策のさらなる充実をはかるとともに、本年度より着用が義務化されたチャイルドシートに対する理解促進に努める。また、交通安全キャンペーンの実施等の活動を通じた交通事故低減対策を継続して行う。
さらに、交通事故防止や交通流円滑化に多大な効果が期待されているITSについても、技術的検討のみならず利用環境や周辺インフラ等、総合的観点からの検討を行い、その早期実現に向けた取り組みを進める。

IV.国際的な相互理解と協力の促進
自動車産業のグローバル化が急速に進展する今日にあっては、あらゆる課題に対して各国自動車業界が共通した認識の下で取り組むことが不可欠であり、このため国際的な相互理解の促進と協力関係の構築に向け積極的な活動を展開していく。
 特に、基準・認証の国際調和については、日本政府が「国連の相互承認協定」ならびに「グローバル協定」へ加入したことにより、その活動がより促進されることが期待されるが、こうした政府の活動を支援すべくOICA等での活動を通じて積極的な取り組みを行う。また、世界規模での燃料品質の向上に向けた取り組みへも引き続き参画していく。

 経済危機を克服し、再び活力を取り戻しつつあるアジア諸国に対しては、引き続きアセアン裾野産業・人材育成支援等の産業協力を関係省庁とも連携しつつ実施するとともに、APEC自動車ダイアローグ会合を通じて産業基盤の強化や自由貿易の推進を支援していく。また、欧・米等においても引き続き自動車部品産業セミナーや商談会の開催支援等を通じた交流を促進し、良好な関係維持に努める。
 わが国通商政策への協力を通じて一層の国際貢献をはかるべく、WTO新ラウンド交渉の早期再開に向けた支援や、サウジアラビアにおける自動車技術研修所設立への対応を進める。

V.情報化の推進
 21世紀における高度情報化社会を見据えて、自動車業界における電子情報標準ネットワーク(JNX:Japanese automotive Network eXchange)の本格的稼働に向けた取り組みを進めるとともに、欧・米関係団体との意見交換を行い、JNXの国際対応化を検討していく。

 以上、上記の課題への取り組みに際しては、関係省庁、関係団体等とも連携しつつ、積極的な活動を行い、わが国経済・社会の発展に貢献していく。

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