自工会リリース

高速道路の二輪車二人乗り実現に向けて
―欧州実態調査報告書をとりまとめ―

平成13年2月21日

 日本自動車工業会の二輪車特別委員会(委員長:長谷川武彦/ヤマハ発動機M社長)は、高速道路の二輪車二人乗りに関する欧州(ドイツ,イタリア)実態調査を行い、この度、同調査報告書をとりまとめた。

 わが国では1965(昭和40)年より、高速自動車国道および自動車専用道路における二輪車の二人乗りが禁止されており、このため二輪車(二輪車ユーザー)は二人乗りの場合、一般道しか通行できず、長距離移動などに著しく不便を来しており、同ユーザーからは「二人乗りの場合にも快適で安全な高速道路を利用したい」という声があがっている。

 二輪車業界はかねてより同規制の撤廃を行政当局に要望しているところであり、2000(平成12)年度には、この案件が政府・規制改革委員会の論点に加わり、同規制を解除できるかどうか警察庁が検討している。

 同調査では、ドイツおよびイタリアの警察、IVM(ドイツ二輪車産業協会)、BAST(ドイツ連邦ハイウエイ調査研究所)、AISCAT(イタリア高速道路・トンネル委託会社協会)等を訪問して情報を収集した。また両国の高速道で二輪車二人乗りを自ら体験走行するなど、二人乗りの是非について調査を行った。

 同調査によると、(1)高速道路の二人乗り事故は極めて少ない、(2)二輪車にとって高速道路を走るリスクは一般道路を走るリスクの3分の1、(3)二人乗りの事故発生率は一人乗りを下回る、(4)二人乗りが原因となっておきた高速道路上での二輪車事故例は見当たらない等の実態が明らかとなり、報告書は「高速道路の二人乗りは一般道以上に安全なものである。二人乗り二輪車の高速道路利用は一層の安全確保につながると期待できるため、一日も早い規制解除の実現を提言する」と結論付けている。
 今後当会では、同報告書を警察庁をはじめとする関係省庁や、政府・規制改革委員会、内閣府OTO室(市場開放問題苦情処理対策室)などへ展開することとしている。

<報告書の概要は次の通り。>
【名称】
 「欧州高速道路における二輪車二人乗り実態」調査報告書(A4判72頁)

【調査目的】
規制解除の検討に資するため、高速道路の二人乗りにはどの程度のリスクがあるか、
それが実際に行われている欧州の国々の実態について把握したもの。

【調査対象国】
 ドイツおよびイタリア

【調査内容】
・欧州における二輪車の利用実態
・高速道路における二人乗りの安全について
・高速道路における二輪車二人乗り体験【調査方法】
・欧州の二輪車および高速道路についてデータ・文献を収集した。
・調査団が現地の警察など交通行政当局を訪問、二輪車の高速道路利用および事故状況に関する意見を聴取した。
・直接インタビューあるいはインターネットを利用して、欧米の二輪車関係者(交通行政担当者、警察官、交通安全機関、二輪車ユーザー団体、二輪専門誌、ジャーナリストなど)に、高速道路の二人乗りが安全か危険かについて意見を募った。
・現地の高速道路について道路・交通状況を視察し、二輪車二人乗りを体験した。

【主な調査結果】
(1)高速道路での二人乗りの事故発生状況について――
・高速道路の二人乗り事故はきわめて少ない。

1999年にドイツの高速道路における二輪車乗車中の死者は6人で、交通事故死者全体の0.08%。
同様にイタリアにおいては、全体の0.1%程度と推定された。

・二輪車にとって高速道路を走るリスクは一般道を走るリスクの3分の1。

ドイツの一般道における二輪車の交通量当たりの死亡率は9.4人/億台km。
同じく高速道路では2.9人/億台kmとなり、リスクは一般道の3分の1である。

・二人乗りの事故発生率は一人乗りを下回る。

イタリアでは高速道路を走行する二輪車の半数以上(関係者の証言では7割)が二人乗りとみられるが、事故は一人乗りが79.0%、二人乗りが21.0%の割合で発生しており、二人乗りしているときのほうが一人のときよりも事故発生率が低い傾向にある。

(2)高速道路での二人乗りの事故原因について――
・ドイツおよびイタリアの警察に聴取した結果、両国において、二人乗りが原因となっておきた高速道路上での二輪車事故は記録にはなかった。

(3)高速道路の設計基準の比較――
・日本と欧米の高速道路を比較すると、設計基準の著しい格差は認められず、実情を見るかぎり道路自体の安全性は同等と思われる。

なお、現地警察の見解をはじめ、二輪車ユーザーにインタビューしたりインターネットを通じて集めた意見によると、「二輪車は二人乗りの場合でも高速道路を走行したほうが安全」との考えが多くを占めた。
このほか報告書では、高速道路での二人乗り体験について「危険に対する不安が少なく余裕の運転・同乗が可能」であったこと、ドイツ交通安全学の権威フーベルト・コッホ博士が「高速道路利用は二輪車の事故率を下げる」と指摘していることなどを紹介している。

【提言】
同報告書では、調査結果を踏まえて次のように提言している。

高速道路の走行は一人乗りの場合のみならず、二人乗りの場合でも、一般道以上に安全なものである。日本においても、二人乗り二輪車の高速道路利用は一層の安全確保につながると期待できるため、一日も早い規制解除の実現を提言する。
なお、高速道路の二輪車安全利用の推進については、ユーザーの安全啓発活動など、二輪車業界は総力を挙げて取り組むものである。

【その他】
同報告書の完成と同時に、現地で収録された映像をもとに、調査報告ビデオ「ヨーロッパ高速道路 二輪車二人乗りの実態」(12分)が作成された。
また、同報告書をもとにパンフレット「高速道路と二人乗りの安全」(A4判8頁)も作成され、調査報告書のポイントをわかりやすく紹介している。


以 上

 

 



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