ニュースリリース

2022年度小型・軽トラック市場動向調査について

一般社団法人日本自動車工業会(会長:豊田 章男)は、2022年度に実施した『小型・軽トラック市場動向調査』の結果をまとめました。

本調査は、小型・軽トラックユーザーの保有・購入・使用実態の変化を時系列的に把握し、今後の市場動向を探っていくことを目的としております。
また今回は、カーボンニュートラルに向けた社会の流れを受けた次世代環境車や電気自動車に対するユーザー意識の変化、燃料価格高騰やドライバー不足が及ぼす輸送への影響と対応策等、小型・軽トラック市場を取り巻く社会的な環境変化の影響、及び、小型・軽トラックに対する新しいニーズを把握すべく、以下6項目をトピックとして取り上げ、分析を行いました。

  1. 環境問題・次世代環境車・電気自動車に対する意識
  2. 輸送状況の変化とサービスへの期待
  3. 安全意識と先進安全技術
  4. 運転手不足の現状と課題
  5. 農家におけるトラック・バン
  6. 個人軽貨物輸送業者の実態

調査結果の主な特徴は以下のとおりです。

  • 保有状況と変化の背景
    • 保有台数全体は1207万台に増加。小型トラック・軽ボンバンは減少傾向が継続。
    • 直近2年間のトラック・バン保有台数は、運輸業以外、運輸業ともに「保有減」事業所が「保有増」事業所を上回るも大半は変化なし。
  • 需要構造の実態
    • 小型・軽トラック・バン全体の販売台数は2020年(新型コロナウィルス感染拡大)以降大きく減少。
  • 使用実態
    • 使用パターンでは「仕事・私用兼用」比率が上昇。仕事利用では、軽トラック以外で「作業場・仕事場・現場への往復」が最も高く、軽トラックでは「一般家庭など最終消費者への配達・集荷」が18年度から上昇。
    • 仕事利用の行動半径は、いずれの車種も「~10km」が18年度から増加。
    • 仕事利用の平均月間走行距離は、18年度に比べ短距離化。
    • 仕事利用の運行形態は、いずれの車種も「往復型」が最多。小型トラックの運輸業では「巡回型」が上昇。
    • 私用利用では、小型・軽トラックは「園芸・農作業」が、小型バンは「通勤・通学」が、軽キャブバン・ボンネットバンは「日用品の買物」が高い。
    • 私用利用の平均月間走行距離は、仕事利用に比べ短い。
    • 私用利用では、小型トラックが重量・スペース積載率ともに最も高い。
  • 今後の購入・保有意向
    • 次期買い替え意向車は、小型は同タイプ・同クラス歩留まり意向が継続。軽キャブバン・ボンバンは他タイプ移行が増加。特に軽キャブバンでの軽乗用車意向比率が上昇。
    • 今後1~2年間の保有増減の見通しをみると、運輸業では保有増の見通しをしている事業所が増加、運輸業以外ではほとんどの事業所で変わらない見通し。
  • 環境問題・次世代環境車・電気自動車に対する意識
    • 環境意識の醸成と燃料価格高騰の背景から、小型・軽トラックで次世代環境車の導入意向が増加。「電気自動車」は事業所調査では軽トラックで、ユーザー調査では軽バンでの意向が最も高い。「車両価格」「充電設備」「バッテリー」「航続距離」の懸念は残るも、事業所調査では「航続距離」の懸念は減少。
  • 輸送状況の変化とサービスへの期待
    • 輸送業務では少量・軽量・近距離が直近2年で増加。運輸業以外では宅配便等の外注を約7割が現在利用。宅配便を中心とした各配達サービスの利用意向が増加。運輸業におけるカーシェアリングの現利用・利用意向は運輸業以外に比べ低く、希望の車両を利用できる確実性がないことがネック。
  • 安全意識と先進安全技術
    • 自動車の安全性に約8割の事業所が関心あり。運輸業では購入時重視が約8割と18年度調査から増加。有償装着意向は「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の検知・保護支援システム」「誤発進防止システム」が高い。事業所調査において、自動運転技術への期待度・導入意向ともに18年度より増加。
  • 運転手不足の現状と課題
    • 運輸業では運転手不足困窮度が減少するも約半数は未だ困窮。60代以上男性運転手の採用率が最も高く「運転操作等で問題」「荷役作業が困難」等が障害点としてあがる。現在、今後ともに30~50代男性運転手の採用意向が高く、今後の運転手採用に有効な対策として「給与水準の引き上げ」「未経験者を育成する為の教育の充実」を検討。
  • 農家におけるトラック・バン
    • 農家の4割弱が規模縮小・廃業予定。うち3割弱が保有減もしくは保有中止。一方で、主運転者50代以下では今後について規模拡大・会社運営の意向がみられる。

報告書は一般向けに配布するとともに、当会ホームページにも掲載します。
自工会ウェブサイト http://www.jama.or.jp/

以上

ご参考

2022年度小型・軽トラック市場調査の概要

1.調査実施概要(2022年度調査)

  事業所調査 ユーザー調査 WEB調査
調査手法 訪問留置調査法 WEB調査法
調査地域 東京都周辺50キロ圏及び大阪市・名古屋市各30キロ圏 全国
調査対象 従業者5人以上の事業所 小型・軽トラック・バン保有ユーザー 軽トラック・バン保有個人軽貨物輸送業者
母集団 平成28年経済センサスの東京都・愛知県・大阪府の事業所数 全国の小型・軽トラック・バン保有ユーザー WEBモニター
有効回収数 746サンプル 1,264サンプル 53サンプル

【2022年度 調査期間】

  • 事業所調査期間:2022年8月12日(金)~10月21日(金)
  • ユーザー調査期間:2022年8月12日(金)~10月12日(水)
  • WEB調査期間:2022年10月21日(金)~10月26日(水)

2.調査結果概要

[総括]
  • 保有台数は小型トラック、軽ボンバンの減少傾向が継続。事業所における全体的な物資輸送量は減少し、運輸業では運転手不足の困窮度に改善が見られるものの、未だ半数以上の事業所が運転手不足に困窮。従業員数の減少により保有台数を減らしている事業所も発生している。
  • 半数以上が運転手不足で困窮する運輸業では、30~50代男性運転手の採用意向が最も高い一方、採用実態では60代以上男性運転手の採用が最も高く、「運転操作の問題」「荷役作業が困難」等の課題があげられる。今後の30~50代男性運転手採用には「給与水準の引き上げ」「未経験者を育成するための教育の充実」が有効と考える事業所が多い。
  • 「新型コロナウイルス感染拡大の影響」に加え、運輸業以外では「原材料価格の上昇」、運輸業では「燃料価格の上昇」により経営状態は18年度より悪化。輸送合理化策として、「保有台数の適正化」「買い替え延期」を実施する事業所が増加している。
  • 環境意識の醸成と燃料価格高騰を背景に、小型・軽トラックで次世代環境車の導入意向が増加。中でもハイブリッド車意向が最も高いが、電気自動車も軽トラック・軽バンで意向が増加。次世代環境車の導入においては「車両価格の高さ」が共通課題。電気自動車の導入においては「充電設備の設置コスト」「バッテリーの耐用年数」「航続距離」が懸念点の上位にあがるが、「航続距離」の懸念は18年度より減少している。
  • 自動車の安全性に対する意識はトラック・バンを保有する事業所全体で高い。運輸業では車両購入時の安全性重視度が高く、「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の検知・保護支援システム」「誤発進防止システム」の装着意向が高い。合わせて自動運転への期待・導入意向も増加している。
1)時系列分析
[保有状況と変化の背景]
  • 保有台数全体は1207万台に増加。小型トラック・軽ボンバンは減少傾向が継続。
  • 直近2年間のトラック・バン保有台数は、運輸業以外、運輸業ともに「保有減」事業所が「保有増」事業所を上回るも大半は変化なし。

<保有変化の背景>

運輸業の経営状態は18年度から悪化。物資輸送量の減少や従業員減少が小型トラックの保有台数減に影響。経営不調の要因として、「新型コロナウイルス感染拡大の影響」の他、運輸業では「燃料価格の上昇」が特徴的にあがる。運輸業における運転手不足は18年度から減少するも、半数は困窮。

[需要構造の実態]
  • 小型・軽トラック・バン全体の販売台数は2020年(新型コロナウィルス感染拡大)以降大きく減少。

<需要動向の背景>

直近2年間に代替したユーザーにおける前保有車の保有期間は、小型・軽ともに長期化。
軽は購入時期を予定より早めたユーザーが遅らせたユーザーを上回る。
また、小型から新車軽へのダウンサイジングが進行、軽歩留まり(軽から軽へ)も引き続き高く、軽販売台数増加の要因と思われる。

[使用実態]
  • 使用パターンでは「仕事・私用兼用」比率が上昇。仕事利用では、軽トラック以外で「作業場・仕事場・現場への往復」が最も高く、軽トラックでは「一般家庭など最終消費者への配達・集荷」が18年度から上昇。
  • 仕事利用の行動半径は、いずれの車種も「~10km」が18年度から増加。
  • 仕事利用の平均月間走行距離は、18年度に比べ短距離化。
  • 仕事利用の運行形態は、いずれの車種も「往復型」が最多。小型トラックの運輸業では「巡回型」が上昇。
  • 私用利用では、小型・軽トラックは「園芸・農作業」が、小型バンは「通勤・通学」が、軽キャブバン・ボンネットバンは「日用品の買物」が高い。
  • 私用利用の平均月間走行距離は、仕事利用に比べ短い。
  • 私用利用では、小型トラックが重量・スペース積載率ともに最も高い。

<使用変化の背景>

Eコマースの拡大により、ラストワンマイルを担う行動半径の短い近距離輸送が増加。
また、運輸業以外では業務効率化として輸送の外注化を推進したことで、車両の稼働率が低下し、月間走行距離の短距離化が進展。

[今後の購入・保有意向]
  • 次期買い替え意向車は、小型は同タイプ・同クラス歩留まり意向が継続。軽キャブバン・ボンバンは他タイプ移行が増加。特に軽キャブバンでの軽乗用車意向比率が上昇。
  • 今後1~2年間の保有増減の見通しをみると、運輸業では保有増の見通しをしている事業所が増加、運輸業以外ではほとんどの事業所で変わらない見通し。

<今後の保有増減の背景>

運輸業以外、運輸業ともに、今後1~2年間の経営状態の見通しを好調とみる事業所が18年度から上昇。また、物資輸送量も増加する見通しの事業所が減少する見通しの事業所を上回るものの、運輸業以外では不景気や資金・経済的困難から「代替延期」層が増加している。

2)トピックス分析
[環境問題・次世代環境車・電気自動車に対する意識]
  • 環境意識の醸成と燃料価格高騰の背景から、小型・軽トラックで次世代環境車の導入意向が増加。
    「電気自動車」は事業所調査では軽トラックで、ユーザー調査では軽バンでの意向が最も高い。「車両価格」「充電設備」「バッテリー」「航続距離」の懸念は残るも、事業所調査では「航続距離」の懸念は減少。
    • 燃料価格高騰に負担を感じている事業所は8割を超え、「多少価格が上がっても低燃費の車を選ぶ」事業所は71%。
    • 事業所調査では軽トラックで、ユーザー調査では軽バンで「電気自動車」の購入意向が高い。
    • 次世代環境車共通の懸念は「車両価格」。「電気自動車」の懸念については「充電設備」「バッテリー」「航続距離」が高いが、事業所調査では「航続距離」の懸念が18年度から大きく減少。
[輸送状況の変化とサービスへの期待]
  • 輸送業務では少量・軽量・近距離が直近2年で増加。運輸業以外では宅配便等の外注を約7割が現在利用。宅配便を中心とした各配達サービスの利用意向が増加。運輸業におけるカーシェアリングの現利用・利用意向は運輸業以外に比べ低く、希望の車両を利用できる確実性がないことがネック。
    • 直近2年で少量・軽量・近距離の輸送業務が増加。
    • 現在利用の輸送手段は、運輸業以外では「宅配便等の外注」、運輸業では「自社の車」が7割前後で最も高い。
    • 配達サービス利用状況は、引続き宅配便の現利用・利用意向が最も高いものの、その他配達サービスの利用意向も増加。
    • カーシェアリングの現利用、利用意向は全体で1割程度。運輸業以外は運輸業に比べ利用意向が高い。非利用理由は「トータルコストが割高」「時間・期間の制約がある」「希望の車両を利用できる確実性がない」ことがあがり、特に運輸業では「希望の車両を利用できる確実性がない」ことが高い。
[安全意識と先進安全技術]
  • 自動車の安全性に約8割の事業所が関心あり。運輸業では購入時重視が約8割と18年度調査から増加。有償装着意向は「衝突被害軽減ブレーキ」「歩行者の検知・保護支援システム」「誤発進防止システム」が高い。事業所調査において、自動運転技術への期待度・導入意向ともに18年度より増加。
    • 自動車の安全性に対し約8割の事業所が関心を持ち、約7割の事業所が購入時に重視。運輸業で関心度・重視度が高い。
    • 装着意向が最も高い先進安全技術は「衝突被害軽減ブレーキ」。
    • 事業所調査全体では、自動運転技術への期待が6割以上で、期待度・導入意向ともに18年度より増加。
    • 運輸業で今後利用したいコネクティッド機能の上位は「車両の故障予知管理」「車両点検管理」「ルート最適化管理」。
[運転手不足の現状と課題]
  • 運輸業では運転手不足困窮度が減少するも約半数は未だ困窮。60代以上男性運転手の採用率が最も高く「運転操作等で問題」「荷役作業が困難」等が障害点としてあがる。現在、今後ともに30~50代男性運転手の採用意向が高く、今後の運転手採用に有効な対策として「給与水準の引き上げ」「未経験者を育成する為の教育の充実」を検討。
    • 運輸業では65歳以上運転手のいる事業所比率が5割以上に増加。
    • 運輸業は30~50代男性運転手の採用意向が高いものの、60代以上男性運転手の採用率が最も高く、採用上の障害点は「運転操作等で問題」「荷役作業が困難」「免許が限定的」があがる。
    • 運輸業は運転手採用対策に積極的であり、「給与水準の引き上げ」「未経験者を育成する為の教育の充実」が採用に有効と考える。
[農家におけるトラック・バン]
  • 農家の4割弱が規模縮小・廃業予定。うち3割弱が保有減もしくは保有中止。一方で、主運転者50代以下では今後について規模拡大・会社運営の意向がみられる。
    • 販売農家は減少傾向が継続する一方、農地所有適格法人数は増加傾向。
    • 4割弱の農家が規模縮小もしくは廃業の意向。一方、主運転者50代以下では「規模を拡大・会社運営予定」が約4割。
    • 現保有車、次期意向車ともに軽トラックが最も多い。但し、規模縮小・廃業予定農家では3割弱が保有減もしくは保有中止の意向をしめす。
    • 消費地への輸送方法は自家出荷が中心という傾向は変わらず。

以上

資料
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