記者会見

豊田会長挨拶

豊田でございます。はじめに、天皇陛下のご即位ならびに新たな元号、令和のはじまりを心よりお慶び申しあげます。令和初の自工会会見となります。皆さま、新しい時代もよろしくお願い申し上げます。

自工会も、昭和、平成、令和、3つ目の時代を迎えることとなりました。「平成は、どんな時代だったか?」昨年からそんなご質問を沢山いただきました。自動車産業の平成をひと言で申し上げますと、“縮小を続ける市場”“度重なる自然災害”の中で、日本のものづくりを必死に守り抜いた30年ということだったと思います。

もうひとつ、“平成の自工会”として私の記憶に強く残っておりますのは自動車業界がオールジャパンになれた時のことでした。東日本大震災の時、私たちは、1人でも多くの笑顔を取り戻したいと、復旧・復興にむけ、心をひとつにすることが出来ました。各社が自社の利益を優先することなく、ひとつになって取り組めたことは、つらい思い出の中ではありますが、良い記憶として残っております。では、「令和を、どんな時代にしたいか?」4月以降、そんなご質問をいただくだろうと、その答えを考えながら過ごしてまいりました。

私ども自動車産業の令和は「ホームプラネットという視点を大切にしていきたい」と考えております。先ほども震災のことに触れましたが、日本では近年、自然災害が度重なり、尊い命が失われ、また多くの方がそれまで普通にあった生活を失っています。世界的にもこうした災害は続いており、悲しみが絶えません。要因のひとつには、地球温暖化があると思います。また、温暖化以外にも地球規模の課題は、大気汚染、エネルギー問題など沢山ございます。どれも昭和に始まり、平成の時代にも解決できず、深刻になっていったものばかりであり、いずれも自動車がひとつの要因であることは、残念ながら事実だと思います。

交通事故もゼロにはなりません。便利さ、楽しさといったクルマのプラスの面が大きくなった一方で環境汚染や交通事故など、未来へ残してはいけないマイナスの面がまだまだ残されております。プラスの面をもっと大きくして、お客様に笑顔になっていただくということにも、引き続き取り組んでまいりますが、それだけではなく、次の世代が安心して暮らすことのできる“この美しい故郷”を守っていく。すなわち、マイナスの面をミニマイズしていくということも、我々自身で絶対にやり遂げなければいけないと思っております。

当たり前ですが、我々が生きる“この星”は、空も海も繋がっておりますので、持つべき視野は、地球規模でないといけないと思います。生まれた町や国を愛するように、世界中のみんなの故郷である“この星”を愛し、美しい故郷を引き継いでいくことが、私たちの世代に課せられた責任だと思います。だからこそ、「ホームタウン」、「ホームカントリー」に加え、「ホームプラネット」という概念が、いま我々に求められているのだと思っております。

自動車産業は、これまでも新たな環境技術開発に積極的に取り組んでまいりました。ただ、どんなに優れた技術でも、普及しなければ世の中のお役に立つことはできません。国によって環境問題の状況や、クルマの使われ方は異なります。地球上のどんなお客様のご要望にもお応えしていくためには、様々な電動車をフルラインナップで取り組んでおくことが必要だと思っております。ハイブリッド、プラグイン、燃料電池、そしてピュアEV。今の日本の自動車産業は、どの国よりもそれぞれの取り組みが進んでおります。「環境技術を普及させることで、地球という美しい故郷“ホームプラネット”を守りたい」それを、我々日本の自動車産業が、世界に先駆けていければと願っております。

新しい時代の幕が開けた時、お陰様で私も少しお休みをいただけておりました。落ち着いた時間を過ごさせていただく中で、「皇位継承に伴い、新しい時代を迎えるということは日本らしさの一つだな…」など思いながら、日本という国に生きているからこそ感じられる“ありがたみ”のようなものを感じておりました。残念ながら、平成の日本は、他国に比べ成長が鈍化してしまいました。新たな時代を迎え、元気に輝く日本を取り戻したい。そんな想いに至ったのは、私だけではないと思います。日本が世界のお役に立てる、そして世界に感謝されるような日本になる。新たな時代は、そんな風に輝く日本になっていければと願っております。大変革を迎えた我々“自動車産業”は、そんな日本になっていくための大きな力になれると信じております。しかし、1社だけ、1産業だけの頑張りで大変革を力に変えていくのは難しいかもしれません。自動車各社が競い合いながらも力を合わせていく。そして、業界を超えた他の産業の皆さまとも仲間になっていく。更には、国とも一体となり、色々とご支援いただけてはじめて思いを叶えていけるように思っております。

令和には「人々が美しく心寄せあう中で文化は花開く」という意味があると聞きました。先ほど申し上げました「故郷である地球“ホームプラネット”」への想いを持って、みんなが心を寄せ合える“オールジャパン”になっていければ、世界の人々から「日本の自動車があってよかった。ありがとう。」と言ってもらえるようになれると信じております。そんな自動車産業になっていきましょう!

皆さま、どうか引き続き、私どもをご支援いただければと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

以上

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