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記者の窓
「もっと自動車から発信しよう!」

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東 聡
NHK

◇3年3ヵ月ぶりの自民党への政権交代。いわゆる“アベノミクス”効果で円相場はおよそ3年ぶりに1ドル・90円台半ばで推移している。2009年から名古屋で3年間、そして去年夏から東京で自動車業界を担当し、70円台半ばの円高に直面する部品メーカーを取材してきた身としては、まだこの先わからないとはいえ、市場の地合いはずいぶん変わったものだと感じる。

◇政権交代で変わったと言えば、政治部記者だけでなく、民間企業を担当する経済部記者の取材も変化した。「経済財政諮問会議」が復活し、経済再生の司令塔として「産業競争力会議」も設置。内容をいち早くニュースにするため、会議後には毎回、官邸に出向き、民間出身メンバーへのぶら下がり取材を行うようになったのだ。

そんなある日、上司がポツリと発したひと言が響いた。「そういえば、自動車からはだれもメンバーになっていないんだな…」。その通りである。電機、金融、流通、ITなど、さまざまな経営者がメンバーとなる中で、こうした会議に自動車の関係者はだれも名を連ねていない。結果、私が官邸に行く機会もないわけだ。

◇私は別に、メンバー決定の経緯を取材したわけではないし、業界代表として何が何でもメンバーを送り込むべきだと言っているわけでもない。海外のライバルと戦うために世界各地を飛び回る自動車メーカーのトップが、頻繁に開催される会議に拘束されるのはたまらないという事情もあるのだろう。しかし、貿易赤字額が過去最大のおよそ7兆円となる中でも、自動車産業は10兆円以上の貿易黒字をたたき出し、500万人以上の雇用を生み出している。その経営者が日本経済の針路を議論する場に、見える形でいないのは、なんとなく寂しいものだ。

◇自動車メーカーには慎み深い人が多いのだろうか? 取材していると、よく「うちは○○さんほど売り上げが大きくないから…」「うちみたいな田舎会社が…」と謙遜されることがあるが、売り上げ1兆円を上回る会社が何社もひしめき合い、それぞれがグローバルに戦っている業界なんて、他にはない。どの自動車メーカーも、日本のリーダー企業だ。車に関わることだけでなく、組織運営や人事、危機管理のあり方など、他分野の企業が学べることは多い。その立場から、政治・経済・社会など、あらゆる分野にモノを言ってほしいのだ。従業員、部品メーカー、販売店など、もろもろの事情を考えないといけないのかもしれないが、そこを乗り越えて発信していくことが、業界うんぬんを超えて日本の活性化につながっていくのではなかろうか。

まずはトップの皆さんに、さまざまな機会を捉えてもっとモノを言ってもらうことを期待したい。そして記者の側としても、いたずらにことばじりを捉えるのではなく、本質を受け止め、議論を戦わせていきたいと思っている。

(あずま さとし)

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