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“モビリティビジョン2050”ダイアログ ~モビリティ業界から見た ビジョン実現への道筋~スズキ講演レポート
スズキの考える次世代モビリティサービス ~次の100年をお客様と共に歩み続けるために~
プロフィール
スズキ株式会社 次世代モビリティサービス本部 次世代モビリティサービス事業部 事業企画課 課長 松本 祥弘氏

ITS Japanの講演に続きセッション2には、スズキ株式会社の松本祥弘氏が登壇。100年先を見据え、パートナー企業とともに、社会課題の解決に取り組む多数の事例を紹介した。多様な企業と連携するスズキが、協創する上で大切にしているポイントとは。協創で広がる可能性を探った。
生活に密着したインフラモビリティで社会に寄り添う
2月に発表した新中期経営計画でスズキは、「生活に密着したインフラモビリティ」を目指すと宣言。創業者の「常にお客様の側になって発想する」という思いや、3つの行動理念「①小・少・軽・短・美、②現場・現物・現実、③中小企業型経営」を基盤に、コーポレートスローガン「By Your Side」を打ち出している。
このうち「小・少・軽・短・美」について松本氏は、「無駄を省いた効率的で高品質なものづくりの基本方針。社内独自の言葉だったが最近は対外的に発信し、スズキという会社の理解に繋げている」と説明した。

スローガン「By Your Side」を体現する取り組みの1つに、「カーボンニュートラルチャレンジ」がある。関係各社と協力しながら、再生カーボンやバイオ由来のオイル、天然亜麻繊維のフェンダーなどカーボンニュートラルの素材を活用した二輪で、鈴鹿8耐に参戦しているという。

マリン事業では、海を走行中にマイクロプラスチックを回収できる装置を開発。本社がある浜松市においては、2017年から自動運転の実証実験「やらまいかプロジェクト」を遂行し、廃止されたバス路線におけるサービス実現に向けた技術開発を行っている。


「カーボンニュートラルやDX、コロナにおけるニューノーマルに加え、自動車業界ではCASE・MaaSという概念が生まれるなど、大きな変化が訪れています。これらの変化や差し迫る社会課題、多様なニーズには、業界の自助努力だけでは対応できません。幅広い業界の方とパートナーを組み、課題解決を推進していきたいと思っています」

スズキのモビリティ製造力と、多様な企業の技術力が生み出すシナジー
自工会の「モビリティビジョン2050」においても、モビリティは「移動」という役割を超えた新しい価値創造と課題解決を図るべきだとし、この取組みにおいて「パートナーとの協創」を重要な要素に掲げている。その自工会が応援する地域活性化イベントの1つに、軽トラックの荷台に食料品や衣類、雑貨などを陳列して販売する「軽トラ市」がある。岩手県雫石町から全国に広がった可動の定期市で、スズキも運営支援や大学との共同研究を実施。さらにパートナー企業とタッグを組み課題を洗い出す中で、出展者がスマホで商品管理やWEBサイト作成、レジ対応、売上分析ができるアプリ「Shuppa」が誕生している。

スズキと企業との協創事例は多岐にわたり、スタートアップ企業との連携も少なくない。
「50年以上、高齢者向けの電動小型モビリティを製造してきた技術力を“ヒト”だけでなく、“モノ”を運ぶために活用しようと、ここ数年の間にその技術を幅広い業界に持ち込んできました。多様なスタートアップ企業と出会う中で、配送ロボットや除雪ロボット、土木・建築現場などでの運搬モビリティの検討が始まっています」

そのうちの1社であるLOMBY株式会社は、消費者に荷物を届けるラストワンマイル配送を事業としているスタートアップ企業。自動配送ロボ開発において、LOMBYのソフトウェア技術と、スズキのモビリティ製造力がマッチした。また、オーストラリアのApplied Electric Vehiclesも、自動運転のソフトウェア開発力に長けたスタートアップ企業で、スズキの小型車の車体技術を活用した運搬ロボの実証実験が進んでいるという。


アメリカのスタートアップGlydwaysとの協創では、「電車のように活用する」小さなモビリティの実現を目指す。「新しい交通サービスを考えている企業との連携で、インフラを軽くし環境負荷を減らそうと奮闘している」と話した。

ほかにも株式会社Sky Driveと「空飛ぶクルマ」を開発。大阪万博でも、デモ飛行を実施する。
エネルギー領域においては、インド企業とタッグを組み、牛のフンを活用したカーボンニュートラルソリューションを検討。牛糞由来のバイオガスを車の燃料とすることに加え、インド農村地域に住む人たちの生活を支え、収益化も図る狙いもある。

そのほか、開発や連携を加速させるために、スズキはCVCも立ち上げている。
「シリコンバレーを拠点とする『Suzuki Global Ventures』は、新しい分野における技術や知見の獲得を目的として2022年に設立しました。さらに2024年にはインドにも『Next Bharat Ventures』を設立、スズキを育ててくれたともいえるインドにおいて、社会課題解決に取り組む起業家の育成・支援をしたいと考えています」

協創における重要ポイントは、「イコールでウィンウィンな関係」と「思いのすり合わせ」
最後に松本氏は、協創を進める上で重視するポイントについて言及。「①イコールパートナーであること、②ウィンウィンの関係であること、③思いをすり合わせること」の3点を重視していると強調し、「会社の規模に関わらずトップ同士が対等に話し合い、お互いにメリットがある関係性を築きながら、理念や思いをしっかりすり合わせ、パートナーになっていくプロセスが大事だ」と語った。
「スタートアップ企業が持っている技術はキラキラしていて、早く一緒に活動をしたいという思いが溢れてくる。しかし“組むこと”が目的とならないよう、お互いの軸をしっかり持ちながら進めていこうと思っています」

最後に松本氏は、「幅広いステークホルダーの皆様を巻き込みながら、ともに社会課題を解決し、業界一丸となって新しい社会を作っていきたい」と語り、今後の展開に期待を寄せた。そして、会場に集まった人々に「協創で広がる可能性を共に追求していこう」と呼びかけ、セッションを締めくくった。
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