ご参考

新年のご挨拶

一般社団法人 日本自動車工業会
会長 豊田章男

新年あけましておめでとうございます。

我々から、まず、一番に申し上げなければ、いけないことは、やはり自動車税に、史上初めて恒久減税のご決断を頂いたことへのお礼です。
お骨折りいただきました全ての方々に、改めてお礼申し上げます。

もうひとつ感謝を述べたいのは、この件に関係する皆さまが、「日本の自動車税は世界一高い」「税金だけでも携帯電話使用料よりも高い」そして「複雑すぎる」…、こうした“お客様の想い”をワンボイスで訴え続けていただいたことでございます。

今までは、「軽自動車対登録車」とか「車体課税対地方財源」など、少なからず対立軸がありました。
しかし、今回は、皆さま、お客様視点で一枚岩になっていただき、それが、この結果に繋がりました。
皆さま、ありがとうございました。

昨年、我々は、税金を「下げて、下げて」と、一貫してお願いしてまいりました。
たしかに、我々の願いは、文字通り「下げてほしい」ということでしたが、その根底にある“本当の想い”は、「もっと税金を納めていきたい」ということでございます。

こういうことを言いますと、この部分だけをマスコミの方に切り取られ「自工会 豊田会長、減税はもう十分」というような見出しが出てしまいそうですが、焦らずに、この先も、聞いていただければと思います。

自動車産業は、国や国民のために、お役に立ちたいという想いを出発点に、先人たちが国産車をつくり、その歴史が始まりました。
そして、国からのご支援もいただき、今、このように大きな産業に成長させていただきました。

現在、バイクも含め8200万台を、日本で、お乗りいただいており、また、雇用の面では、540万人が、なんらか自動車に関連した仕事をさせて頂いております。
人々の生活を豊かなものにする、また、雇用を生み出す…、こうして、今も国のお役に立てていること、嬉しく思います。

また、納税と言う面で見ましても、「企業」「就業者」「ユーザーの皆様」それぞれが納めるものを試算してみると、全部で、およそ15兆円ございます。
国・地方合わせた税収全体の15%ぐらいになるかと思いますが、この面でも、企業市民としての義務を果たしていけていることは、本当に大切なことだと考えております。

自動車産業は今、100年に一度の大変革期を迎えています。クルマは街と繋がり、社会システムに進化していく…いわばクルマという存在自体が、モデルチェンジをしていこうという時です。
これに向け、いま我々は、本当に、踏ん張りどころにあると思います。

平成を振り返ると、初期に過去最高の市場規模を記録し、以降は、ずっと右下がり…、そして、東日本大震災をはじめ、様々な自然災害にも直面してまいりました。
“日本のものづくりを必死に守り抜いてきた時代”であったと実感します。
ただ、必死に守り抜いてきた“ものづくり”の力こそが、クルマそのもののモデルチェンジを進めていく上でも、我々の原動力に、なり続けていくことは間違いありません。

そして、そのモデルチェンジの先にあるものは、人々の、更なる笑顔だと信じています。
クルマが、もっと社会と繋れば、過疎化や高齢化といった日本が抱える様々な悩みへのチカラになっていけるはずです。
また、貧困や医療など、地球規模で抱える大きな課題にも、もっとお役に立てるとも信じております。

世界の笑顔を増やす“新たなリード役”に、日本がなっていけるのであれば、我々、自動車産業は、その一翼となるべく力の限りを尽くしたい…そう思っております。

そのためには、我々が、紡いできた“ものづくりの力”を、なんとしても守らせてほしい…我々には、その想いしかありません。
そのためにも、もっと多くのお客様に、クルマに乗っていただきたい…。
もちろん、我々が、もっと魅力的なクルマを作っていくこと無しに、それは成し得ません。
先ずは、その努力を続けます。

一方で、冒頭に申し上げた「世界一高い」「携帯の倍もある」そして「複雑な」税制など、“クルマに乗りにくい環境”は、もっと変えていきたいと思っております。
今回、1300億円の減税をいただきました。これが多いのか、少ないのか…ただ、まだまだ世界一のレベルであることは変わりません。依然、アメリカの30倍近いレベルです。
販売スタッフが、簡単に説明できない“複雑さ“も変わっていないと思います。
ぜひ、こうした改善を実現いただき、クルマにもっとお乗りいただけるように…そして、自動車産業に従事する我々は、100年に一度の変革を、なんとしてもチャンスに変えていく…そうさせていただければと思っております。

もし、我々が“ものづくりの力”を失ってしまえば、税金を払える産業でなくなってしまう危機感さえございます。
一方で、我々は、今、もっと、お役にたてるチャンスにあります。だからこそ、その努力を我々にさせてほしい…これが「もっと税金を払い続けたい」と申し上げた、本当の想いでございます。

会場の皆さまは、今まで「減税、減税」と言わせておいて、章男さん、急に何を言い出すんだ…と思われた方もいらっしゃると思いますが、「将来に渡って、日本のために役に立っていこう」という想いは自動車産業、共通の想いだと思います。
ぜひ、こうした想いで、引き続き、皆さまと、心ひとつにしていければ…と思っております。

自動車を起こした先人達は、日本というホームカントリーを笑顔にしようと頑張ってきました。
その後、先輩達は、世界各国で、その地をホームタウンと考えながら、そこに住む人々をも笑顔にするようなクルマづくりを続けてきました。
2019年からは、“クルマそのもの”のモデルチェンジという、今まで経験したことのない“我々自身の大きな変革”に向かっていきます。

クルマが“つながる”ようになった先には、もしかしたら国境など、関係ない世界があるのでは…とも考えております。
また、空を見上げれば、そこは境なく繋がっており、環境問題も、みんなの故郷である地球全体の課題です。

そう考えますと、今までのホームタウン、ホームカントリーという想いは、大切に引き継ぎながらも、それをオーバーライドする“ホームプラネット”という大きな傘となるビジョンが必要になってくるのではないかと思っております。

我々、日本の自動車産業…、ホームプラネットという想いも、新たに意識しながら、さらに多くの笑顔のために、全員で、力を尽くす1年にしていければ…と考えております。
ぜひとも、お力をお貸しいただきたいと思います。みなさま、どうぞ、よろしくお願いいたします。
以上、私からの挨拶とさせていただきます。どうも、ありがとうございました。

(2019年1月7日 自動車工業団体新春賀詞交歓会でのご挨拶より)

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